テレビの平面的描写、空間認識に影響

 日本民間放送連盟が20代の男女4110人を対象に行った聞き取り調査で、人気ボーカルデュオ、コブクロに所属する2人のメンバーの身長がほぼ同じであることを、98%の人が知らないことが明らかになった。液晶やプラズマなど平面的なテレビの急激な増加が、若い世代の空間認識を歪めていることが浮き彫りになった。

 コブクロはテレビに出演するさい、サングラスをかけている男性がカメラに寄り、もう一人が後ろに立つ。サングラスの男性のほうが背が高く見えるが、これは錯覚だ。奥行きのあるブラウン管テレビでは前後の位置関係が分かりやすく、2人の身長も正しく認識されるが、平面的な薄型テレビでは2人が左右に並んでいるように見えるため、誤認識につながりやすい。すべてのテレビがブラウン管を搭載していた昭和60年のオール阪神巨人についての設問で、正解率が87%だったのとは対照的だ。

 アグネスラムさんのテレビ映像に魅力を感じた人の比率は3%と、昭和48年の調査時の87%を大きく下回った。テレビ業界の関係者の間では、平面的な表示装置に映し出されることで、凹凸に富んだグラマラスな姿態の魅力が大幅に削がれてしまったのが原因との見方が強まっている。

 昭和40年代、一世を風靡した谷啓さんの定番ギャグ「ガチョーン」についての質問では、谷さんの手がブラウン管の外から奥に引き込まれるように見えたことを知っている人がほとんどいなかった。その一方で「『テレビをすぐ近くで見ていたら、谷さんに頭をつかまれて、危うくテレビの中に引っ張りこまれるところだった』と親に聞いたことがある」などと回答した人も4人いた。

 テレビ評論家の小松川辰夫さんは「アナログ放送の停止が迫り、猛烈な勢いで平面テレビが増えている。奥行き表現が物理的に難しい平面テレビの特性を考えれば、ブラウン管のテレビに慣れ親しんだ世代も、遅かれ早かれ薄っぺらな描写方法に慣れなくてはいけないのだろう」と語る。ブラウン管の中央ラインから左に45度移動すれば、滝川クリステルが正対してくれる──そんな常識もアナログ時代の終焉とともに過去のものとなりそうだ。

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