プロジェクトAのディレクターズカット発売

 重さのあるものは、すべて地球に向かって落ちていく。枯れ葉も、雪も、もちろんニュートンが見つめていたリンゴも。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ドン)」

 空気抵抗を無視するなら落下速度はどの物体も同じだが、落ちていく物体の美しさには違いがある。「世界で最も美しい落下物、それはジャッキー」。このほど発売されたDVD、「プロジェクトA~ディレクターズカット」を観た人なら、同じ結論に達するはずだ。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ドン)」

 香港映画ファンのみならず、アクション映画ファンなら誰でも20世紀最高傑作のひとつに数えるであろうプロジェクトA(監督・主演・武術指導・脚本・主題歌=ジャッキー・チェン)の公開から四半世紀が経過したいま、ジャッキーが自ら「純粋なプロジェクトA」として世に問うたのがこのディレクターズカット。昨年、香港で劇場公開されたとき、激しい論争を巻き起こしたというのもうなずける大胆な再編集だ。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ドン)」

 ファンにはおなじみの、ジャッキーら一派とユン・ピョウら一派の乱闘のシーンもなければ、ジャッキーがアクロバティックに自転車を乗りこなすシーンもない。オープニングを飾るのは、時計台からの落下シーン。事前になんのストーリー展開もないまま、時計台の針につかまっていたジャッキーが叫びとともに落ちていき、2枚の日よけを突き破り、鈍い音を立てて地面に激突する。過去に何十回となく繰り返し見たシーンだとはいえ、「大丈夫かジャッキー」と手に汗を握らずにはいられない。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ドン)」

 そしてジャッキーは、時計台から地面へと再び落下する。ジャッキーを愛するファンなら「なんでまた時計台に登ったの? ひょっとして学習能力ゼロ?」などと疑問に思ったりはしない。サービス精神が旺盛なジャッキーはこの落下シーンを何度も撮影し、映画の本編ではうち2回分が採用されたのだ。2回目の落下のあと、ジャッキーは両脇をユン・ピョウとヒロイン女優に抱えられながら画面の横に消える。ここまでは我々の知るプロジェクトAと変わらない。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ドン)」

 驚いたのは次のシーンだ。なぜかジャッキーがまたも時計台から落ちていく。2枚の日よけを破り、地面に衝突するのは一緒だが、微妙に体の向きや落ちる位置が違う。これまで採用されていなかったテイクであることがわかる。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ドン)」

 次も、そのまた次も落下シーンだけが延々と繰り返される。フィルムをコピーしてつなぎ合わせているのではない。ジャッキーが時計台から落ちては上り、落ちては上り、命の危険を省みずに撮影した落下シーンをことごとく収録し、ほかの不純な要素を一切排除したのが、この「ディレクターズカット」なのだ。監督としてのジャッキーが納得するまで自らに落下を続けるよう命じた執念が、映像を通じてひしひしと伝わってくる。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ビリビリ)うぁぁぁぁぁぁぁぁ(ドン)」

 落下シーンだけが繰り返されるとはいえ、単調な映画ではない。アングルは上から、下から、横からとめまぐるしく変わる。ヘルメットに装着した超小型カメラを使ったテイクでは、落下時でさえも豊かな表情を見せるジャッキーの顔面が間近から捉えられている。超スローモーションのテイクでは、地面に落ちた瞬間に巻き上がる砂ぼこりが生々しい。

「う ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ (ビ リ ビ リ ビ リ ビ リ) う ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ (ビ リ ビ リ ビ リ ビ リ)う ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ (ド ォ ォ ォ ォン)」

 本編中での落下シーンは合計96回。深刻なダメージを受けたであろうジャッキーが、撮影から四半世紀が経ったいまも映画界の第一線で活躍していることが信じられない。それ以上に信じがたいのは、本編が終わったあとのNG集でもジャッキーがさらに42回落下するという事実だ。

カテゴリー: 社会 パーマリンク