フリーゲージ電車、高まる期待

フリーゲージ電車 ―― JR総研がこのほど発表した、標準軌(幅1435ミリ)、狭軌(1067ミリ)の両方に乗り入れることができる夢の電車だ。本格的な実験はこれからだが、これまで新幹線と縁がなかった地区では、早くも期待が高まっている。

都電荒川線、三ノ輪橋駅付近の商店街で精肉店を営む伊藤靖弘さんは、「山形、秋田方向からもお客さんがチンチンこまちに乗って来てくれれば、街の活性化につながる」と語る。荒川区役所の試算によれば、フリーゲージ化の経済効果は都電のみ乗り入れの場合が30億円、荒川遊園にも乗り入れた場合には30億300万円に達するという。

JR総研の目標は標準軌と狭軌への対応だが、輸送力増強のため莫大な設備投資を迫られている首都圏の私鉄各社では、さらなる狭軌化の可能性に注目している。左右の車輪の間隔を数センチに縮めれば、片方の線路で電車を走らせ、2本の線路で電車を往復させることができるからだ。現行の方式と比べて輸送量は倍増し、乗客同士の連帯感を高めることもできる。カーブでは電車のアウトサイドに新聞を悠々と読める空間が広がるかもしれない。

逆に車輪の間隔を広げ、並行して複数の路線が走る区間で、巨大な幅のお座敷列車を運行する構想もある。首都圏では中央線快速と各駅停車(お茶の水-吉祥寺間)、京浜東北線と東海道線(東京-横浜間)、営団地下鉄半蔵門線と銀座線(渋谷-青山一丁目間)などが路線の候補として浮上している。

フリーゲージ電車は、鉄道会社や通勤客たちだけでなく、数学者たちの難問も解くことになりそうだ。アレクサンドリアの数学者、エウクレイデスは紀元前300年ごろ、次の問題を残している。

「ピラミッドを右側に見ながら走っている馬車の幅が、少しずつ狭くなった。やがて幅はゼロになり、今度は右側の車輪が左側に、左側の車輪が右側に来た。さて、ピラミッドは馬車の右側にあるか、左側にあるか」

走行しながら車輪の間隔を変えられる車両の製造が不可能だったため、エウクレイデスの問いかけは2300年近くにわたって、幾何学最大の謎とされてきた。JR総研では来年の夏にも、エジプトの試験線で本格的な走行実験を開始することにしている。

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