「日本全国総不況」に過熱する男たち

「北海道拓殖銀行」の本店入り口前にかかっていた真ちゅう製のプレートのお値段は、8700万円。16日に拓銀が解体され、98年に及んだ銀行の歴史に幕を下ろしたあと行われたオークションで、コレクターの堺哲二さんが落札した。予想を大きく上回る高値の理由を、堺さんは「都銀の経営破綻はこれが最後だと判断した」と説明する。

不景気からの出口が見えてこない日本経済。そのなかで俄然、活気づいている人々がいる。倒産、破綻した企業にゆかりの深い品物を蒐集しているコレクターたちだ。東西ドイツ統一のさい、壁のかけらを求めてベルリンに集まった人たちが、先駆けになったとも言われている。

これまでの最高値は1億2480万円。昨年11月24日、山一証券の野沢正平社長が自主廃業を発表した記者会見の席上、止めどなくあふれ出る涙を拭ったハンカチについた値段だ。その映像は各国に伝えられ、「日本株式会社」の経営が深刻な危機に直面していることを世界に知らしめた。「日本経済全体が破たんしてくれれば、歴史の証人であるこのハンカチは、10倍にも100倍にも値上がりしてくれるだろう」と、所有者の吉村健司さんは夢を膨らませる。

しかし、この記録はもうすぐ破られる可能性が強い。森ビルと複数のコレクターが結成したシンジケート団の間で、現在、銀座6丁目にある16階建てビルの譲渡に関する交渉が進められている。この9月末に森ビルが146億円で購入するまで、日産自動車が所有していた本社ビルだ。日産は森ビルと賃貸借契約を結び、現在でも本社をこのビルに置いている。「日産の経営が悪化し、記念品としての価値が高まる可能性に我々は賭けた」と、シンジケート団の中心人物は自信満々の様子で語る。連結ベースで2兆5000億円に達する日産の有利子負債が、自信の根拠なのだろう。

その一方で、コレクターたちのニーズを逆手に取る企業もあらわれた。米アップル・コンピュータが発売したiMacは、斬新なデザインで人気を集め、記録的なヒット商品となった。専門店、ばんくらぷ堂店主の飯田信夫さんは「アップルが最後に咲かせた一花に世界中のコレクターが飛びついた」と指摘すると同時に、「iMacのヒットでアップルが経営立て直しに成功し、コレクターたちの期待が外れる可能性もある」と安易な思惑買いの風潮に警鐘を鳴らしている。

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