日本全国総不況 どうした黄門様?

 「あの悪代官め、阿漕なまねばかりしやがって。ご隠居、もう我慢ができません」
「そうですご隠居、今すぐとっつかまえてやりましょう」
「助さん、角さん、そう慌てるでない。もう少し様子をみましょう」

 おなじみ、人気時代劇「水戸黄門」のワンシーンである。しかし今回ばかりは待ちすぎではないかと、助さんも角さんも怒っている。備前の代官の悪行に気がついたのは今季の放送が始まってから間もない4月の下旬。助さんと角さんはすぐに悪政に苦しむ庶民を助けようとしたが、黄門様は「もっと大きなたくらみがあるに違いない」と制止した。それからの半年間で、代官は盗み、火付け、殺し、米の買占め、抜け荷、美人局など、考えられる限りの悪を尽くしたが、なおも黄門様は動かない。いつもなら一週間にひとつの地方で事件を解決し、次の週には別の地方に現れるはずの一行は、今回のシリーズでは備前地方にとどまったきりだ。

 10月からは「大岡越前」の放送が始まり、「水戸黄門」は視聴者からの非難の合唱のなか、半年間の「休眠期間」に入った。水戸に帰れるあてはない。来年4月に放送が再開されるまで、備前の城下で物乞いをしなければならないかもしれない。黄門様はまだ誰にも打ち明けていないが、実はスポンサーの松下電器産業から、旅行のための資金がまだ送られてきていないのだ。

 松下は30日、中間期の減益減収を発表したばかり。来年3月期の通期決算でも、この傾向は変わらないとみられている。映画制作、ゲーム機などの新分野参入に失敗し、パソコン市場でもシェア低迷が続いている松下にとり、コストの徹底的な削減は収益改善のための絶対条件だ。これまで聖域視されていたナショナル・アワーにも、ついにメスが入った。ご印籠まで利用した必死の嘆願にもかかわらず出張費は大幅にカットされ、黄門様は事件解決の先送りを余儀なくされた。

 日本経済の屋台骨、電機産業がいま危機に直面している。そのしわ寄せを受けているのが、大手電機メーカーの提供を受けている長寿テレビ番組だ。

 先月末、磯野波平さんは東芝本社に呼ばれ、登場シーンの大幅な削減を通知された。約2ヶ月前に東芝側が行った希望退職の提案を、波平さんが拒絶したためだ。東芝も中間期は赤字。通期では黒字を確保する見通しだが、収益の柱はなんといっても300億円以上の利益を産むパソコン部門だ。「パソコンを使えない磯野さんに、広告塔としての価値はほとんどない」と、東芝の重役は厳しい口調で指摘する。

 マスオさんの収入も4年前から据え置かれていると言われ、磯野家の家計は極めて厳しい。タマの食事シーンは96年8月に放送されたのが最後。電機業界の関係者の間では「お魚をくわえて逃げようとしたのは、実はタマなのではないか」との噂がまことしやかに流れた。

 日立製作所では中間期が48年ぶりの赤字に転落した。半導体部門の赤字は1200億円に達し、家電部門、重電部門でも受注の減少傾向が続いている。唯一好調なのは、独立採算性の導入を受けてこの春に誕生したみやげ物部門だ。「河合奈保子と木彫りのからまん棒」など、かつての人気商品をモチーフにした木製のおもちゃが受注を伸ばした。しかし材料として使われた「この木なんの木気になる木」の内部は空洞化が著しいと言われ、「年末までの倒壊にスーパーヒトシ君」といった冷ややかな声もある。

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