ラーメン店がメニュー拡張でコロナ防止に協力

 埼玉県戸田市内のラーメン店「頑固庵」は、メニューを大幅に拡張して新型コロナウイルスの感染防止対策に協力する。手始めに今月中旬からイチゴパフェを発売。将来はフランス料理や満漢全席にもレパートリーを広げる意向だ。

 頑固庵の店主・野沢巧さん(38)歳は店名の通り妥協を許さない頑固な性格が災いし、18歳で社会に出てから20以上の仕事を転々としたが、どの職場でも周囲との衝突を繰り返し、長続きしなかった。2年前に一念発起してラーメン店を開いたが、「私語禁止、ケータイ禁止」といった口うるさい店内ルールにネット上で批判が集中。これに注目したテレビ局が野沢さんをバラエティ番組に起用したことから話題となり、店には連日、多くの人が叱られたさに押しかけ、しばらくは繁盛が続いた。

 しかし、肝心のラーメン作りの技術はいま一つで、ブームが過ぎると客は急減し、今年に入ってからは閑古鳥が鳴く状態。コロナウイルスの影響もあり、閉店を考えていた6月中旬、戸田保健所の職員がのれんをくぐった。

「協力してくれませんか」

 職員の説明はこうだ。県は全力で感染防止に努めているが、手の打ちようがないのが会食の場を通じた感染拡大。店にも営業継続の権利があり、閉鎖を命令するわけにもいかない。せめて飲食をする人が黙っていてくれれば、リスクを抑制することができる……。

 県内3万店の飲食店に県が無料配布を始めたポスターがある。ねじり鉢巻きに黒Tシャツ姿で腕組みしているのが野沢さん。背後には店内に開店当時から掲げられている「私語禁止、ケータイ禁止」の注意書きがある。

 しかし、保健所からの要請を受けた飲食店の大半は、客からの反発を恐れて沈黙要請に踏み切れないでいる。「それなら俺が安全な会食の場を提供する」と一念発起した野沢さんは、ラーメンだけでなく、会社の宴会、顧客への接待、同窓会、法事、デート、学生の合コンなど幅広い飲食ニーズに対応するため、動画サイトで調理法を研究しながら新メニューの開発に取り組んでいる。

 「はい、とろチャーシューみそラーメン1丁。これおまけのビーフストロガノフ。食べてみて」

 突然の試食品サービスに戸惑いながら、客はおそるおそるビーフストロガノフを箸でつまみ、口に運んだ。「ま、まずい」との率直な叫びが口から飛び出すその寸前、厨房から飛んできたレンゲが客の眉間を正確にヒット。店内に唾液飛沫が拡散する事態は食い止められた。

 野沢さんは近く、県主催の講習会でこうした技術を県内の飲食店関係者に伝授することになっている。

カテゴリー: パーマリンク