当たらぬも八卦、当たらぬも八卦

「先生、こんばんは」

「おう、よく来た、よく来た。待っていたぞ」

「商売、どうですか」

「相変わらず、あがったりだよ。今夜もお前さんが最初で最後のお客だ」

「いつかきっと、先生も有名になりますよ」

「白々しいぞ。そんなこと言って、お前も全然信じていないんだろ」

「えぇ、まぁ」

「で、占って欲しいのは、どの銘柄だ?」

「化繊準大手の橋本紡績です。よろしくおねがいします」

「よし。わかった。……社長の生年月日は?」

「昭和12年6月4日です」

「取締役の血液型は?」

「A型が2人、B型が4人、O型が3人、AB型が2人です」

「で、本社の写真と見取り図は?」

「はい、持って来ました。この通りでございます」

「ではまず八卦で占ってしんぜよう………。おっ、これはかなり下げるぞ」

「ほほう、そうですか」

「念のため血液型でも……。む、これもストップ安と出たな」

「なんと!」

「本社ビルの家相は……。おぉ、大暴落」

「先生、ありがとうございます。明日、一番に買い注文を入れます」

「念のため聞くが、やはり、売り注文ではないのだな」

「先生が安くなるとおっしゃるのなら、高くなるに決まってますから」

「こら、あんまりだぞ」

「すいません。でも、実際、先生の占いはまったく当たりません」

「しかし、五年に一度くらいは……」

「いえいえ、先生にはこの十年お世話になっておりますが、まさに百発零中。おかげで大儲けさせていただきました。あっ、そうそう。先週の大福製薬のお礼、すっかり忘れておりました。どうぞお収めください」

「えっ、こんなにたくさん。やはり外れたのか?」

「そりゃあもう。先生は大福製薬も『大暴落』とおっしゃいましたが、新薬発表でストップ高」

「うぅむ。そうか。うれしいやら、悲しいやら」

「先生、お顔色が悪いようですが」

「そうなんだ。実は、心配ごとがあってな」

「と、おっしゃいますと」

「どうも、予感がするのだよ」

「ひょっとして、占いが当たりそうだとか」

「当たり! おまえが当ててどうする」

「すいません。でも、本当ですか?」

「本当だとも。この世界に入って以来、外しに外しまくったこの私だが、どうも、そろそろ大化けするような気がするのだ」

「物騒なことおっしゃらないでください」

「そんな気がするのだから仕方がない」

「本当にそうなったら、私は破滅ですよ」

「ためしに自分で自分の運勢を占ってみた」

「で、結果はどうでした?」

「八卦でも星占いでもトランプでも、『当たるようになる』と出たぞ」

「なぁんだ。先生、それならまだまだ安泰ですよ」

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