カリブに根付いた三本締め

「お手を拝借、YOOO!」

黄色、緑、赤……。原色の服に身を包んだドレッド・ヘアーの若者300人余りに向って、NPO法人ジャマイカ三本締め普及会の久保田正志理事長(66)が叫んだ。練習会場の砂浜に、日本とはどこか違う三本締めが鳴り響いた。

長年、東証一部上場メーカーの総務畑を歩んできた久保田さんには、小気味良い三本締めこそが日本人の心を支え、高度経済成長のバックボーンになったとの確信があった。このリズムを世界に広めたいと一念発起して会社を早期退職してNPOを設立したのは10年前。最初に拠点を設置したオーストリアでは社会がすでに成熟し、三本締めが必要とされていなかったことに加え、ワルツのリズムの厚い壁にはばまれてあえなく徹退。次に進出したのがカリブの島国、ジャマイカだった。

リズム感は日本人よりはるかに優れている。豊かな国ではないが、若いエネルギーに満ちていた。ところが、「すぐにでもジャマイカ全域に三本諦めが広がるはず」という期待は見事に裏切られた。現地の若者に手取り足取り教えても、地球のほぼ裏側から持ち込まれた

チャチャチャッ チャチャチャッ チャチャチャッチャッ

の三本締めリズムを、ジャマイカ人のフィーリングは受け付けなかった。当初は30人いた受講者は1人減り、2人減り、一時はひとケタに。無料でコーヒーを飲ませるからと近所のお年寄りを強引に勧誘し、頼み込んで一本締めだけ練習してもらっていた時期もある。

転機は3年前の冬。ある日、風邪で体中の関節が痛かった久保田さんは、最初の「チャチャチャッをうまく叩くことができず、リスムに乗りきれないまま三本締めを打ってしまった。

ンチャンチャッ ンチャンチャッ ンチャンチャチャッ

「チャ」をところどころ休符に変えただけだが、あくびをかみ殺していた現地の若者が「それだ!」と飛びつき、人が変わったように練習に没頭するようになった。「今になれば簡単だが、レゲエ三本締めの概念が思い浮かばなかった」。久保田さんは、編み始めてから3年で立派になったドレッドヘアーをかきながら笑う。

いまやレゲエ三本締めはジャマイカのミュージックシーンを席巻しており、10月2日付けのシングルチャートでは上位10曲のうち4曲に三本締めが取り入れられている。しかし目指すゴールははるか先だ。久保田さんは目を輝かせる。

「この国の企業が、株主からの反対に動じずに株主総会の議事を速やかに進行できるようにするのが夢です」

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