体長1メートル以上、延長サンマ悠々

 茨城県内の魚加工品メーカー、いなり水産。工場内の水槽では養殖サンマが悠々と泳いでいる。尖った頭もV字型の尾びれも天然物と同じ。違うのは頭部と尾びれの間をつなぐ胴体が長さ1メートルに達しているということだ。

 親サンマが産卵し、受精したのは昨年の秋。孵化した直後、体長2ミリの稚魚約300匹の尾びれに、女性のパート従業員が直径2ミリの抵抗板を括りつけた。成長に合わせ大きな抵抗板に取り替える気の遠くなるような作業を3週間おきに繰り返した。水槽内で泳ぐサンマの胴体は抵抗板で後方へと引っ張られて伸び続け、成魚になるまでに42匹の体長が80センチを超えた。

 加工効率のアップにつながる延長サンマの開発は、過去に東南アジアでの成功例があるが、このとき採用されたのはサンマの尾びれに小エビのペーストを塗り、別の個体に食いつかせ、その個体の後ろにも同じ方法で別の個体を連結する「チェーン方式」。理論上は長さ10キロのサンマも可能だが、焼いた時に身に残る切れ目がネックとなり、製品化には至っていなかった。「新方式ならこの欠点も克服できる」と加藤俊徳社長は自信をのぞかせる。

 いなり水産では並行して、山芋、オクラ、根昆布を原料とする水産飼料の開発にも取り組んでいる。この飼料を毎日大量に与えられた養殖サンマの体表からは粘液が分泌し、厚さ3ミリの層を形成。魚を手づかみしつづけて30年のベテラン従業員も苦労するほどのヌルヌル感だという。

 隣接する空き地ではこの秋から、本格的な養殖のための大型水槽が建設される予定。順調に行けば2年後の夏には延長サンマの市場出荷が始まる。「それまでには香料の配合とガスコンロの構造に工夫を加え、うなぎの脂と醤油、砂糖、みりんの混合液が高温の木炭に付着したときに発生する音と香りを人工的に再現したい」(加藤社長)

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