文科省、「道徳教育員制度」の導入を断念

 文部科学省は13日、来年度からの「道徳教育員制度」の導入を断念すると発表した。道徳教員の条件を満たす優れた人材が著しく社会に不足しているのが理由。方針の変更は安倍政権が進める教育改革全体に影響を及ぼしそうだ。

 文科省では当初、教員を対象に研修を実施することで、道徳の教科化に伴う授業数増加に対応する計画だったが、「道徳教育なんて畏れ多い」といった理由で研修を辞退する教員が相次いだことから方針の変更を余儀なくされ、「裁判員制度」を参考に、社会の広い分野から道徳教員を集める「道徳教育員制度」の導入を検討していた。

 しかし文部科学省が行った調査によれば、道徳教員に求められる高度な条件を満たす人は成人人口の0.1%以下。「電車でお年寄りに席を譲る」「ゴミをポイ捨てしない」といった最低限の条件を満たしている人は多いものの、「電車でお年寄りに席を譲らない人にその場で注意する」「ゴミをポイ捨てする人をしかる」といった実践を伴う人はほとんどおらず、このまま導入を強行すれば、道徳の授業が日本書紀に関する古文の授業と実質的に同じ内容になるおそれがでてきた。

 文科省では新設する大学教育課程の道徳教育コースで、数年をかけて道徳のエキスパートを養成することも検討したが、道徳教育の教育者に求められる条件はさらに厳しく、これも実現のメドは立っていない。なお、道徳教育の強化を主張する政治家に対し、率先して道徳教育の教壇に立つよう要請する声は最初から出ていないという。

 その一方で、「健常者なのに身障者用駐車場を長時間占有する」「ゴミ分別のルールを守らない」「イライラすると匿名掲示板で人の悪口を書く」といった人材が豊富であることは文科省の調査で確認されている。安倍政権の構想通りに道徳教育を強化できるかどうかは、これらの人材の力を教育現場で「反面教師」として生かせるかどうかにかかっていると言えそうだ。

カテゴリー: 教育 パーマリンク