生活臭と学習能力に強い相関関係

日本、中国、アメリカの研究者が行った共同研究の結果から、幼児期に嗅いだ匂いの多様性とその後の学習能力の間に強い相関関係のあることが、初めて科学的に実証された。生活臭を嫌う日本社会のあり方に一石を投じそうだ。

成長過程での適度な刺激が脳の神経細胞の発育を促進することは、これまでにもマウスを使った実験で確かめられていた。今回3ヶ国で行われた共同研究では、4~5歳の幼児100人ずつを生活環境を3つに分けて無臭、常に同じ匂い、毎日違う匂いの中で生活させ、簡単な図形パズルの課題を与えた。毎日違う匂いの中で育ったグループは他の2つのグループと比較して7~8%学習能力に優れているとの結果がでた。匂いが心地よいかどうかは、学習能力に影響しなかった。

研究グループの日本側の代表を務めた山崎耀・国立教育研究所主任研究員は「人間は視覚や聴覚を通じ、外から刺激を受けて思考能力を高めていくもの。臭覚が視覚や聴覚と同様の役割を果たしているとしても何ら不思議はない」との見方を示す。

日本社会の変化の状況も今回の研究結果を裏付ける。昭和40年代以前にも教育の質をめぐる論争はあったが、日本のこどもの学力は世界的にみて高い水準にあると信じられていた。当時は下水道が整備されていない地域が多く、家庭用脱臭剤もほとんど普及しておらず、どの家庭にも糠床があり、日本の家庭は生活臭にあふれていた。

昭和50年代に入ると状況は一変。地方でも水洗トイレが当たり前になり、体臭や生活臭を消すさまざまな商品が登場した。ほぼ同じころ「abcの書けない高校生」「分数同士の掛け算ができない大学生」など、学力の低下を示す事例が注目されるようになった。

象徴的なできごとが起きたのは1977(昭和52)年。ある子ども雑誌が行ったアンケート調査で、言われて最も傷つく悪口に「臭い」を選んだ人の割合が、この年初めて「頭が悪い」を超えたのだ。その後、OECDの調査で日本における学力低下の傾向が鮮明となり、文部科学省や地方自治体がさまざまな教育改革を行ったものの、効果は上がらなかった。

「その理由はゆとり教育に代表される誤った対策、親の経済力低下にあると考えられていたが、今回の調査結果から考えて、教育改革の効果はファブリーズをはじめとする脱臭剤・芳香剤によって根こそぎ分解されていたとみるべき」と、山崎氏は指摘する。

脱臭剤・芳香剤のメーカーは今回の調査結果を、「アホくさい」などと真剣に受け止めておらず、「無臭こそがアホを生み出す」という山崎氏の主張とはなおも平行線を描いている。

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