Report 憲法はいま
9条だけじゃない、改憲の焦点

 日本経済調査センターが憲法記念日にあわせ、「憲法問題についての提言書」を発表した。国民の関心が高い9条の改正の是非を棚上げする一方で、25条1項を改正すべきとの方向を明確に打ち出したことが注目を集めている。

 憲法25条1項は、いわゆる「生存権」についての規定。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定め、一定以下の貧困に甘んじている人がいる場合、政府に是正を求めている。この条文が想定しているのは、最低限度の生活に甘んじている人だけだった。

 経済危機で日本の行く末に暗雲が垂れこめるなか、経済学者や労組、非正規労働者の間に急速に広がっているのは、ミドルクラスや毎晩ゴージャスライフを享受している階層を、野放しにしておいていいのかという疑問だ。

 「最低限度以下の生活を強いられている人が急増しているのは、少数の人間が最低限度よりも著しく高い生活を享受して、富の不均衡が拡大しているからではないか? 国民すべてが等しく最低限度ちょうどの生活を受け入れれば、少なくとも最低限度以下の人はいなくなるはずだ」(NPO支援の和ネットワーク理事長 衣川誠氏)

 日本経済調査センターの提言書にも、このような見方を背景に、25条1項の具体的な改正案が盛り込まれた。

「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む義務を有する」

 現行条文の「権利」を「義務」に置き換えただけだが、意味は根本的に違ってくる。最低限度以下の生活をしている国民には自助努力を、最低限度以上にいる国民には最低限度までの引き下げを求める内容だ。憲法学者の間では、この条文に照らせば自宅でのバスローブ着用はもちろんのこと、コッカースパニエルの飼育や、夕食の「もう一品」も違憲になるとの見方が有力だ。

 年2兆円――日本の生活保護費給付総額は今年度、大台を突破する見通しだ。景気振興策の大盤振る舞いで財政赤字は記録的な水準に達している。「最低数年のうちに国家財政の破綻が現実味を帯びてくる。唯一の回避策は、みんなが最低限度の生活で我慢すること」と、提言書の起草作業にかかわった京都大学教授の山崎重雄氏は説明する。

 まったく違う角度から25条1項の改正に賛成するのは、気象変動予測協会の天野隆上級研究員。「中流階級以上はエネルギー効率の高い技術を導入して地球にやさしい生活をしたつもりになっているが、そういう技術がエネルギー消費の免罪符になっている。CO2削減のためには、新しいテクノロジーよりも最低限度の生活のほうが有効だろう」

 一方で、改憲に反対する声も根強い。25条1項改正のためには、このような声をくみ上げたうえでコンセンサスを形成すること前提条件となりそうだ。

「最低限度の生活を国民が広く共有するなら構わないが、健康な生活を強いられるのは19条の保障する思想の自由と矛盾することになり、到底受け入れられない」(不健康生活にこだわる全国ネットワーク代表、蓑田隆氏)

「『ぶんかてき』ってどーいう意味なんだよ? おいっ」(巨大リアウィング装着ハイエースオーナー連絡協議会事務局長、成瀬三郎氏)

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