ヤマ場迎えた日航再建

 国土交通省が日本航空の経営再建に向け、強力なリーダーシップを発揮している。経営が破たんすれば民主党政権にとり大きな失点となるのは確実。恫喝と受け止められかねない強硬な手法で、現役の社員、債権者、そしてOBに経営立て直しへの協力を求めている。

 国際線で747-400型機を操縦する神田伸生機長は、日航の2010年版世界の美女カレンダーを広げてみて絶句した。日航機が就航している世界各国で選考したモデルが水着やドレス、民族衣装をまとい、観光地や都市で撮影した写真を掲載したこのカレンダーは、日航関係者や得意先が毎年楽しみにしているノベルティ。ところが、「2月」を開いてみるとスイス・アルプスの山々をバックに、日本人女性が仁王立ちしてカメラをにらみつけている。年齢はぱっと見たところ約50歳。お世辞にも美しいとはいえず、前年までのカレンダーなら到底採用されなかったモデルだ。

 「苦しい経営は、こんなところにも現れているのか」

 日航の経営危機を改めて痛感した神田が、さらなる賃下げを覚悟したのとちょうど同じころ、みずほコーポレート銀行本店で開かれた役員会では、重役らが巨大なスクリーンから思わず顔を背けていた。

「噂には聞いていたが……」

「ひどい。ひどすぎる」

「これがマーケットに漏れたら、日航は一巻の終わり。債権はまったく回収できなくなる」

 「6月」の蘇州。東洋のヴェニスと呼ばれる美しい街並みのなかで、やはり50歳前後の日本人女性が腕組みして立つ。スイスで撮られた写真よりも衝撃的だったのは、チャイナドレスの腰のあたりまでスリットが走っていたためだ。

「国交相はなんと言っているんだ?」

「さらなるつなぎ融資と債権の圧縮に応じるまで、2010年版美女カレンダーをダンプに満載して送り続けると……」

「金融庁は助けてくれないのか?」

「どうにもなりません。金融庁にもダンプが向かっているようです」

「なんとかして断る方法はないのか?」

 会議室は重い沈黙に包まれた。国交省からの圧力にメガバンクが屈した瞬間だ。

 当初、政府主導の経営再建がうまく行くかどうかは日航OBが企業年金の大幅な減額を呑むかどうかにかかっているとみられていた。11月下旬に都内で開かれたOB会で、西松遥社長が企業年金の大幅な削減に協力を初めて求めたさいには、削減は受け入れられないとの空気が支配的だった。ところが、その後は多くのOBが現経営陣の提案に歩みより、12月半ばには3分の2以上のOBが削減に同意した。あるOBが匿名を条件に譲歩の理由を明かす。

「自宅に郵送されてきたカレンダーを見ると、『8月』はワイキキのビーチで撮った辻元副大臣のワンピースの水着姿だった。その1週間後にも届いたカレンダーでは、水着がビキニになっていた。さらに1週間後にはヤシの実ブラ。『次は手ブラらしい』という情報が流れ、OB会はパニックに陥り、なだれを打つように賛成へと転じた」

 金融庁の頭を飛び越え、関係者の心理的な不安をあおってまで再建策への同意を取り付ける国交省の強引なやり方には、批判も多い。自民党の運輸族は「そこまでやるか」とあきれ顔だ。しかし、前原誠司国土交通相は15日の記者会見で、こともなげにいい切った。

「政府が全面的にバックアップして日航の経営再建を後押しする以上、世界の美女カレンダーに辻元清美副大臣が登場するのは、極めて自然な流れだ」

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