カラオケ採点機器に耐久工業部品賞

 50年の歴史をもつ米国工業振興会の「ロッテルゼール賞」は、工業分野で優れた耐久性を発揮し、科学技術や産業、文化の発展に貢献した部品に贈られる賞。過去の授賞リストには、石油掘削用回転ドリルの刃先、サターン5型ロケットの噴射ノズル、地雷処理ローラーなど、耐久エンジニアリング史を彩ってきた花形部品が名を連ねる。

 今年はカラオケ機器メーカー、第一興商の精密採点モジュールが選ばれた。19世紀前半、年間300試合の野球と150試合のアメフトに出場したとされる伝説のアスリート、ジョン・ロッテルゼールのレリーフをはめ込んだ楯が太平洋を渡るのはこれが初めてだ。

 カラオケ機器の採点装置は、どんなに下手な歌からも逃げることなく、最後まで音程や音量、ビブラート、しゃくり、抑揚を解析しなければならない。聞くに堪えないような歌声でも、50点以上の評価を下さないと怒った客から飲料をかけられる。演算装置やメモリに想像を絶する負荷がかかるために、通常のデバイスで採点装置を組み立てれば、2日と持たずに爆発炎上する。耐久性を高める工夫がこらされた専用採点装置でも、従来品では3ヶ月程度で腐敗して異臭を放つようになるため、こまめな交換が必要だった。

 第一興商では精密採点モジュールのマイクロプロセッサやメモリーに、回路幅を通常の10倍に広げたチップを採用。バックアップ回路を8重とし、順番に休止状態に入らせることで耐久性を大幅に高め、1年程度の連続使用を可能にした。歌唱力が危険なレベルに達した場合には、入力信号にモーツァルトの調べやアフリカゾウの咆哮を混ぜることで、回路のロジックが歪むのを未然に防いでいる。

 商品寿命を迎えてお役御免となった精密採点モジュールは、「カラオケ文化の日」とされる毎年の10月17日、練馬区にある真言寺で供養されたあと、大深度地下の貯蔵庫で永久保存される。地上の盛り場の喧騒から完全に遮断された静寂の空間のなかで、精密採点モジュールが恐怖の歌声から完全に解放されるのか、我々には知るよしもない。

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