異次元映画、制作が難航

 初の本格的な3D映画「アバター」が世界的にヒットしたことを受け、国内の映画界で「新次元」への進出を目指す動きが加速している。しかし、撮影や編集、上映に必要な器材はすべて更新が必要。表現方法も見直しを迫られることから、ロードショーは当分先のことになりそうだ。

 2月下旬、茨城県内にある半導体製造装置の研究施設でテストが行われた。大型冷蔵庫のような装置のスイッチが押されると、うめくような低い音が実験室に響いた。その5分後、装置の側面に開いた小さな穴から光線が飛び出し、スクリーンに1本の直線を映し出した。すぐに線の太さが測定される。「45ナノメートル」。髪の毛の2万分の1という極細線にもかかわらず、研究チームのリーダーは首を横に振った。「これではまだ広すぎる。本当の1次元映画を目指すには、さらに45ナノメートル削らなければ……」

 隣の部屋で日夜開発に取り組む別のチームでも、開発作業は難航していた。スクリーンに照らし出された光の点の直径は、こちらも45ナノメートル。彼らが目指す0次元がいつ実現するのか、メドが立っていない状況だ。

 「松本清張先生の『点と線』は過去に何度か映画化、テレビドラマ化されているが、原作の精神が十分には生かされていない。年末までには0次元、1次元の器材を完成させてクランクインしたい」と、松竹の映画プロデューサー、小谷新氏は意欲を見せるが、映画館で0次元、1次元映像を鑑賞するのに必要な高性能顕微鏡の開発という課題はいまも手つかずのまま残る。

 これとは対照的に、東京ムービーで制作が順調に進んでいるようにみえたのが、70年代に日本で放送されて人気を集めた「ど根性ガエル」の3Dアニメ版だ。ひろしとゴリライモの格闘、よし子先生のセクシーなボディライン、梅さんの華麗なバイクライディングテクニックが、2次元の呪縛を解き放たれてダイナミックに描写されている。

 ところが、これまでにマスコミに公開された映像には、主人公であるはずのカエル、ピョン吉がまったく登場していない。当初は本物のカエルに似せた微妙な色調整に手間取っているとの説明だったが、最近になって制作側では、ピョン吉が行方不明になっている事実を認めた。3DのCG映像に詳しい人物は、こう語る。

「幾何学的に言えば、ピョン吉はシャツに貼り付いた2次元ガエルだったが、劇中ではプラス1次元、つまり3次元空間で跳んだり跳ねたりの活躍を見せていた。3次元空間を舞台とする新作ではプラス1次元の世界、つまり4次元空間に飛び出してしまったおそれがある。だとすれば見つけ出すのは至難の業だろう」

 テレビアニメの制作時、ピョン吉は「この世で1匹」と定義されていることから、代役は理論的に存在しない。異次元空間のなかでいまもどっこい生きているはずのピョン吉の確保。それが映画完成の前提条件となる。

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