「孤島」に切り込む国産ケータイ

 男性5人のアイドルグループが携帯電話で会話したり、写真をとったり、音楽を聞いたり……。どこかで見たことのある映像だが、違いは5人がいずれも黒人だということだ。

 携帯電話市場の一角を占めるauが、マダガスカルでの事業展開に向けて制作したテレビCMを公開した。日本で成功したマーケティングの手法は、マダガスカルの消費者にもそのまま受け入れられるはずと、同社の関係者は自信を見せる。

 この国の市場に注目するのは、日本国内でauと激しいシェア争いを演じているNTTドコモや、急速にユーザーを増やしているソフトバンクも同じ。国内の携帯3社に端末を供給しているNEC、パナソニック、シャープ、富士通などのメーカーも、アフリカ大陸から隔絶されたマダガスカル島という新興市場に熱い視線を送る。

 その背景には、端末メーカー各社が感じる危機感がある。長い間、国産機種がほぼ独占していた日本国内の携帯端末市場で、米アップル社製のiPhoneをはじめとする輸入品のシェアが高まっている。今後も市場競争から脱落しないためには、国内市場から海外市場、とくに今後急成長が期待される発展途上国に打って出ることが必須条件だ。

 しかし、日本製携帯電話はこれまで、世界市場ではいばらの道を歩んできた。自動車、カメラ、工作機械……。「Made in Japan」が世界市場を席巻している分野は多いのに、日本製携帯電話が強いのは独自規格の通用する国内だけ。ほかの国の市場はノキア、サムスン、モトローラといった欧米、アジアの大手によって分割されており、日本のメーカー各社のシェアはじりじりと下がり続ける。

 唯一の例外が、西太平洋に浮かぶ島。この島のテレビに、先月からこんなCMが映し出されている。

 「おい、ホワイト家族24ってどういう意味なんだ?」と父。

 「えーっ、お父さんにも説明しないといけないの?」と若い娘。

 こちらもどこかで見たCMだが、登場人物はスペイン語を話し、父親役はオリジナルの白い犬ではなく、大きなゾウガメだ。

 多くの固有種が生息するこの島では、島民の環境保護意識が高い。すでに国際市場のレッドデータブックに掲載されたと言われる日本製携帯電話は、彼らにとり遠く離れた場所に住む人との通信手段というよりも、手厚く保護すべき貴重種なのだ。この島で使われている携帯電話は現在約2万台。そのうち95%を日本製が占める。

 自然保護官のマルシア・ロドリゲスさんはこう語る。

 「私たちはパナソニックやソニー、シャープの携帯が大好きなんだ。ガラパゴスゾウガメやガラパゴスリクイグアナ、ガラパゴスペンギンと同じくらいね」

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