都立高校の大半、校歌に振り付け

 東京都教育委員会の調査で、都立高校の8割が、校歌の振り付けを導入済みであることが明らかになった。卒業式で全校生徒が直立不動で校歌を斉唱する風景は、すでに過去のものになったようだ。

 北区にある滝野川工業高校では数年前から、大半の生徒が校歌斉唱のさいに声を出していないことが職員の間で問題になっていた。歌唱力に自信のあるごく一部の生徒を除けば、大半は所在なく手足をぶらぶらさせるだけ。杉村勇作校長が生徒の一人に理由を尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。「だって、俺たちはボーカルじゃなく、パフォーマーだから」。いまの若者が歌を、ボーカルとダンスという2つの側面から捉えていることにやっと気がついたと、杉村校長は当時の経緯を振り返る。

 公式の振り付けは体育教師の駒田信二教諭(35)が生徒らの意見を取り入れて考案した。間奏では一直線に並んだ生徒がぴったり息を合わせて縦横に回転するかのようなアクションを見せるのは、自動車科で学ぶガソリンエンジンのクランクの動きを忠実に再現した結果だ。

 「滝工」では公式振り付けの導入で、学校の雰囲気がすっかり変わった。服装や髪型が素行の悪さを感じさせるのは相変わらずだが、周辺の女子高に通う生徒の間で人気が出たのを皮切りに、滝工校歌をダンス付きで歌う小中学生も増えた。変化は教員の研修活動を通じてほかの都立高校にも伝えられ、競うように振り付けが導入された。

 評論家の多くは、音楽教育の理論から逸脱するものだとして、校歌の振り付け導入に反対しているが、その一方で従来生徒が関心を示さなかったジャンルの音楽に振り付けを導入することで、生徒が前向きになると期待する関係者も少なくない。都教育委の幹部によれば、石原慎太郎都知事の密命を受け、卒業式シーズンまでに「君が代」の公式振り付けを制定するための作業が水面下で進行中だという。

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