記憶力や思考能力、歳をとっても衰えず

 人間の記憶力や思考能力は、これまで考えられていたほどには年齢とともに衰えないことが、研究者グループの調査により明らかになった。いわゆる「脳トレ」のあり方をめぐる論議に一石を投じそうだ。

 この調査を行ったのは、東京医科歯科大学の加勢隆彦教授ら。「名前が思い出せなくなった。若いころはこんなことなかったのに」と嘆く50代以上の男女298人の家族から聞き取り調査を行ったところ、30代のころから「名前が思い出せなくなった。若いころはこんなことなかったのに」と嘆いていた事実が浮き彫りになった。

 思考能力についても同様の結果が出た。聞き取り調査に対して「若いころのほうが計算が速かった」と答えた50代の男女307人のうち290人は、中学校の数学の計算ドリルのテスト答案の半分が白紙の状態だった。

 加瀬教授は「衰えたと本人が思うほどには衰えていない。むしろ中高年に達してから妄想力は強まっている」と指摘する。

 「若いころは徹夜しても平気だった」といった証言も、そのあとに「翌朝会社で普通に『おはようございます、ムニャムニャムニャ』と挨拶してから働いていたんだよ」といった続きがあり、本人が気がつかないうちに眠りに落ちていたと推測されるケースがほとんどだという。

 加瀬教授は「若いころは記憶力や体力のなさを恥じていた人が、加齢という正当な理由を得たことで、堂々とアピールできるようになっただけ」との仮説を立てた。今後は酒場などでフィールドワークを行い、中高年間で老化談義を交わす人の心理にどれくらいの度合いで自慢の感情が含まれているのかを確かめたいとしている。

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