スミスもびっくり

16日、東京証券取引所内で「神の見えざる手」が生きたまま捕獲された。十八世紀のイギリスの経済学者、アダム・スミスが存在を予言して以来、世界中の経済学者が探していた市場メカニズムの主役は、意外にもあっけない形で人類の前にその輪郭をあらわした。

東証では最近、一部の銘柄が不自然な値動きを示している。早稲田大学の研究者グループは「神の見えざる手」が何らかの形で需給に手を加えていると判断し、東京都庁の野犬捕獲班とともにチャンスを狙っていた。

しかし、野犬捕獲班が捕まえるのは見える犬に限られている。「見えない犬が見える」とある日突然言い出した超ベテラン捕獲員は、すでに退職していた。そこで研究者グループは、東証のあちこちに小麦粉をまいて、足跡ならぬ指跡がつくのをじっと待った。

三日後、指跡が点々とコンピュータ端末に近づいていく様子が目撃された。どうやら「神の見えざる手」らしい。端末のキーボードの前で指跡が止まった瞬間、捕獲員がバケツ一杯分の小麦粉をかけた。

「見えた!」

白く浮き上がった手が、立会場の床を一目散に逃げて行く。バケツをかぶせて手を捕まえたのは、東証の守衛だった。

捕獲された「神の見えざる手」は、インサイダー取引の疑いで現在東京拘置所に拘留されている。担当検事の調べに対しては中指を垂直に立てるなどかたくなな態度を崩していないが、ジャンケンや指相撲には気軽に応じているという。

市場経済における「神の見えざる手」の役割にメスが入れられるのはこれからだ。「神の見えざる親知らず」の捜索など、課題も山積している。しかし、今回の捕獲が経済学の世界で極めて重要な意味をもっているのは言うまでもない。お手柄の守衛は今年のノーベル経済学賞の有力候補になっている。

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