揺れる回転寿司業界

米フォードがマツダの持ち株比率を大幅に引き上げるとのニュースが世界中を駆け巡った直後、日本回転寿司連合会(日回連)が緊急声明を発表した。

「ロータリーエンジンは回転寿司の心臓だ。今後もマツダとの協力は続ける」

マツダは世界で唯一のロータリーエンジンのメーカー。非採算事業といわれるロータリーエンジン生産からの撤退をフォードが決断すれば、日本全国の回転寿司屋が廃業の危機に直面することになる。日回連の声明は、逆に、回転寿司業界の悩みの深さを示したものだともいえる。

昭和三十年代まで、回転寿司の動力源には水車が使われていた。クリーンで運転コストが安い反面、馬力が小さいために回転できる寿司は五皿が限度とされていた。

そして昭和四十年、マツダが世界で初めてロータリーエンジンの量産・実用化に成功する。震動が少なく回転数が高いロータリーエンジンは、すぐに回転寿司に応用された。これにより回転できる寿司の数は五十皿以上へと飛躍的に向上し、回転寿司は高度経済成長期を迎えた日本産業の中心的存在となった。一時は「寿司は天下の回りもの」という言葉さえ流行したほどだ。

日回連はマツダ、ロータリークラブとともに五年前からダブルタイフーン計画を推進している。寿司の乗った皿を回転させるだけでなく、顧客を逆方向に回転させることにより、回転率と収益を倍増させるという野心的な計画だ。もしロータリーエンジンが生産停止になれば、一説には百億円とも言われる開発費を投じたこの計画が挫折するのは避けられない。

実は、日回連は昨年あたりからロータリーエンジンの安定供給に不安を抱いていた

「昨年の夏、マツダさんから顧客回転系の動力源をロータリーエンジンからV型エンジンに変更するよう提案があった。実際に回転寿司屋のプロトタイプを作って実験してみたが、V字型に動く顧客の座標系を基準すれば、ぐるぐる回っているだけの寿司が極めて複雑な運動をしてしまい、トロもイクラもエビも全部ちらし寿司になってしまった。マツダさんの技術者なら当然分かるはずなのにと、不審には思っていた」(日回連常務理事)

日回連では表面上、フォードおよびマツダに対してロータリーエンジンの生産継続を要求しながらも、水面下では新しい動力源を探している。なかでも注目されているのはJR総合研究所から提案のあったリニア寿司だ。これまで回転寿司は円軌道の上をぐるぐる回るのが常識だったが、リニア寿司では職人と客の間が直線的に結ばれており、寿司は時速五百キロの猛スピードで客の口の中に飛び込む。この方式なら寿司ねたの鮮度が保たれるうえ、騒音がほとんどない。二十一世紀の回転寿司として食品業界の注目を集めている。

フォードによるマツダの経営権掌握が、回転寿司業界におけるコペルニクス的回転の契機になるかもしれない。

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