ブルートレイン、最後の旅

 そりゃ、一番の思い出は50年前の新婚旅行ですよ。海に行ったり温泉に入ったりしたはずなんだけど、一番鮮明に覚えているのは行き帰りの列車ですね。

 列車の旅、とくに寝台列車だと知らない人と向かい合って座ったりして、すぐに友だちみたいにおしゃべりができるのがうれしいよね。新婚なんですって言ったら、同じ車両に乗り合わせた人みんなに冷やかされたなぁ。

 家内とはその後も何度も鉄道で旅行しましたよ。静かなのがいいっていうから最近は全部個室を使っていたけれど、久しぶりこうして乗ってみると、個室じゃないほうがいいね。「お向かいさん」とはもうすっかり友だちですよ。

 そうそう、この駅弁が楽しみでね。プラスチックのプレート、プラスチックの食器に入っている食事なんて、なんの雰囲気もないよ。駅弁なら1日何度でも食べても飽きないね。

 ブルートレインのニュースを見てね、あわてて予約したんですよ。家内は3年前に亡くなりましたけどね。できることなら家内と一緒に乗りたかったですよ、そりゃ。家内の写真は持ってきてますよ。また一緒に鉄道で旅ができるよ、なんてね。

 人生はね、長い旅なんですよ。どんな長い旅にも終わりがくる。ブルートレインの旅も同じで、いつかは降りないといけない。え? 降りなくてもいいの? ほんとに死ぬまで乗っててもいいの? へー、そりゃうれしいな。

──入居者募集開始後5分で満室となった日本初のブルートレイン型老人ホーム「はやぶさ」に暮らす足立啓輔さん(談)

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