9日の人声天語

友人が喫茶店でアイスクリームサンデーを注文した。食べ終えたあとコップに残ったチェリーを見て迷っている。先月までは「食べないほうがいい」。四月からは「食べると違法」と警告しなければならなくなった。

チェリー再利用法が四月一日から施行されている。これまで喫茶店業界で広く行われていたチェリーの再利用を明るみに出して、当局による管理を可能にするのが狙いだ。破損・腐敗したチェリーを除き、再利用が義務づけられた。食べると十万円以下の罰金、または半年以下の禁錮刑が科される。

昨年の国内喫茶店業界でのチェリー需要は約三億個。ところが供給量はわずか百万個余り。ほとんどは繰り返し使われている計算になる。古新聞や鉄くずの回収は盛んだが、このリサイクルの優等生の存在はあまり知られていない。

ボランティアが全国の喫茶店で監視の目を光らせたためか、全面的なリサイクルは大きな混乱もなく実施に移された。少数ながらチェリーを食べようとした客もいたようだが、ボランティアがそれまでの客の氏名、職業、病歴、保菌状況などを説明すれば、納得してもらえるケースがほとんどだという。一市民を変えるのは、やはり一市民しかいないのだなと痛感する。

ピンクだったチェリーは、赤みを増し、茶色く朽ち果てるまでにどんな旅路を歩んで来たのか。小さな冒険物語を空想しながら食べるアイスクリームサンデーの味は、また格別である。

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