マーク制定で振り込め詐欺防止

 熟練犯罪者で作る日本高度犯罪連絡協議会(高犯協)は、振り込め詐欺など安易な詐欺犯罪の増加を重くみて、「マル犯マーク」を制定し、被害者になりやすいお年寄りに注意を呼びかけることを決めた。振り込め詐欺の被害がお年寄りだけでなく、従来型の犯罪者にも及ぶのを座視していられなくなったかたちだ。

 高犯協によれば、振り込め詐欺事件の件数が増加するにつれ、従来型の詐欺、恐喝は減少する傾向にあるという。振り込め詐欺がマスコミに大々的に報道され、犯罪一般に対する警戒感が強まった結果とみられる。犯罪者業界全体でみた振り込め詐欺による収入減は、年間85億円に達するとの試算結果もある。

 いわゆる「当たり屋」として前科26犯の実績を誇る加藤邦武さんによれば、仕事がやりにくくなったのは約3年前から。故意に若者の運転する乗用車にぶつかったあと、運転手を脅して親に電話をかけさせても、親は「ははぁ、これがニュースで言っていた振り込め詐欺というやつか」などと言い、治療費や慰謝料の振り込みを拒否するケースが増えているという。加藤さんは「こっちはケガを覚悟して車に飛び込んでいる。素人が安易な振り込め詐欺で客を奪っていくのは許せない」と憤慨する。

 美人局の常習犯で、過去10年間のうち半分以上を刑務所のなかで過ごしてきた加藤清美さんも、素人がアルバイト感覚で手を染める振り込め詐欺に我慢がならない様子だ。「昔なら、関係をもったことを会社にばらしてもいいのかと書いて手紙を出せば、すぐにお金が振り込まれてきた。いまは、同じような手紙やメールが何十通も届くので、そのなかから私の手紙を探してもらうだけで一苦労。本物の脅迫であることを証明するためのホログラムを手紙に貼ることも考えている」

 高犯協の吉川秋彦常任理事は、30年ほど前から企業を舞台に100億円規模の詐欺を繰り広げてきた。ベテランの目には、昨今の振り込め詐欺が、軽薄な時代の風潮を映し出しているように見える。「我々は数年をかけて準備を整えた。つかまるのを覚悟で、何度も相手と会った。苦労が多い反面、詐欺が成功したときの喜びも大きかった。振り込め詐欺はしょせんニセモノ。我々こそが本物の詐欺犯だ」

 マル犯マークは、従来型の脅迫犯、誘拐犯、拘束犯だけが提示できる。ウソの被害や取引などをでっちあげてお金をだましとる振り込め詐欺は、マークの対象外。高犯協では、係員を金融機関のATMや窓口に配置して、お年寄りが多額のお金を振り込もうとしている場合には、マル犯マークの提示があったかどうか、確認するよう薦める方針だ。このほか、脅迫にしっかりとした裏付けがあることを証明する第三者機関の設置も検討している。

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