転ばない靴ひも、秋にも実用化

 靴メーカーの月星化成が、転ばない靴ひもの開発に成功したと発表した。安全性実証のための試験も終了し、今年の秋にはこの靴ひもを装備した新商品が店頭に並ぶ見通しだ。

 同社基礎技術開発センター主査の片平和裕氏は「靴のデザインが過去100年間にわたり進歩した結果、靴はひもを穴に通しておくだけで脱げなくなっている。いま、靴ひもをしばる理由は、放っておくと転んでしまうから」と語る。「逆に、転ばない靴ひもなら、結ぶ必要はないはず」

 開発は3年前の秋、素材の選択から始まった。研究員が探したのは、片方の靴からだらしなく伸びてもう一方の靴底に踏まれても、引っ張られるとスルリと抜ける摩擦抵抗の極めて低い素材。数百種類の候補から、繊維の表面にテフロン加工をほどこしたひもに白羽の矢が立った。

 昨年の夏以降、月星化成のテスト歩行者が、都内のアスファルト上、千葉県の九十九里浜、北海道の雪原、鳥取砂丘などで、過酷な条件のもと試験を繰り返したが、これまで転倒者はゼロ。靴ひもをほどいたまま山寺の長い石段を駆け下りる危険な実験にもパスし、安全性が実証された。

 日本総合研究所の山本美智子上級研究員によれば、日本人は毎日、靴ひもをしばったりほどいたりするのに、のべ822万分もの時間を費やしており、転ばない靴ひもの開発でこの時間をレジャーや飲食にあてる人が増えると期待されている。

 転ばない靴ひもの開発について、靴ひもをしばらない人でつくる市民団体「日本靴ひも解放戦線」の平岡悟朗代表は、「危険性がなくなった意味で、靴ひもをしばらずに歩く行為が社会の窓を開けたまま歩く行為に初めて肩を並べた。高く評価したい」とコメントしている。

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