大竹さん宅に自衛隊員到着

 3日、東京都豊島区内駒込の大竹鉄之助さん(96)宅に、陸上自衛隊第11師団の自衛隊員3人が到着した。介護保健制度と並ぶ老人福祉政策の柱、PKO(Parent
Kaigo Operation)がいよいよ本格的に動き出した。

 15年前から寝たきりの生活が続く鉄之助さんを世話してきたのは、長男の大竹靖雄さん(72)とその妻、花江さん(68)。靖雄さんは「自分たちももう若くない。できれば最後まで自分たちの手で世話してあげたいが、もう限界」と、自衛隊受け入れ第1号となった理由を説明する。靖雄さんの弟で元教員の秀次さん(70、無職)はこの日、「介護を口実にした軍事家庭化に反対する」と玄関前で気勢を上げたが、鉄之助さんの入浴に手を貸すよう花江さんに求められると、いつものように用事を思い出して姿を消した。

 自衛隊が持ち込んだのは90式自走式ベッド、94式無臭トイレなどの介護機械化装置。操作する相原登三尉は、「肉薄戦では急速に進む高齢化に対抗できない」と語る。しかし、鉄之助さんのおしめは、化学戦用の防護服に身を包んだ加賀清史二尉が取り替えている。老人介護のなかでもっとも重要、かつ、もっとも困難といわれるプロセスは、手作業に頼らざるを得ないのが現状だ。防衛庁では、第一線の自衛隊員が慣れ親しんだスコップの使用を検討したこともあるが、国民の同意を得るのは難しいとみられている。

 「急速な高齢化・少子化が国を滅ぼす可能性のほうが、北朝鮮のミサイルが着弾する可能性よりも大きい」──
今年の防衛白書は、これまで海の向こう側に求めていた仮想敵を、初めて国内問題に移した。いま日本では、65歳以上の高齢者の約4分の1が、65歳以上に達した自分の息子や娘に介護されている。寝たきりの人を介護している寝たきりの人は全国で200万人以上。痴呆症の老人を介護していると思っているが、実は介護されている痴呆性の老人も150万人に達する。「このままでは、外国からの侵略やシーレーンの断絶がなくても、国民生活が破たんしてしまう。いまや老人福祉が安全保障の最も重要な柱だと言える」(本木紀夫陸上幕僚長)

 しかし、自衛隊による介護は、憲法違反の可能性が高いとの指摘もある。「介護される人は確かに生きている。福祉の充実の結果、最低限度の生活を強いられることもなくなった。しかし、軍隊が定めた規則通りに、決まった時間に食事をして、決まった時間に風呂に入り、ただ眠るだけの生活のどこが文化的と言えるのか。少なくとも週に1度、お年寄りを手品や漫才で喜ばせない限り、25条に違反しているのは明らか」(護憲介護を求める市民の会代表、吉本玲子さん)

 その一方で、介護する家族の側では、大部分の人が自衛隊の介入を歓迎している。花江さんは自衛隊介入の夜、「数年ぶりでぐっすりと眠ることができた」。近所の家庭からは、「うちにも介護が必要な老人がいるが、2~3日温泉で休みたい。ヘリコプターでレンジャー部隊を派遣してくれないか」といった問い合わせが防衛庁に寄せられているという。

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