「手かざしエネルギー」の実態

 野田健介氏が代表を務める「手かざしエネルギー研究会」に注目が集まっている。野田氏が主張するように、「手かざしエネルギー研究会」は、科学では説明のつかない力で治療を行っているのか。それとも、週刊誌やテレビのワイドショーが伝えているような反社会的な集団なのか。元会員3人に活動の実態を聞いた。

インタビュアー 島木健吾(本紙社会部長)

元会員 Aさん(会社員 45歳)

Bさん(看護婦 28歳)

Cさん(主婦 24歳)

――みなさんは、それぞれどんな病気だったのですか。

A:10年ほど前からひどい腰痛に悩まされていました。入会する1年ほど前から立てなくなり、休みがちになりました。ちょうど会社の経営が苦しかったもので、暗に上司から退社を求められたりして、せっぱ詰まった状態でした。

B:5年前、自動車運転中に後ろから追突され、4カ月入院しました。それから毎日、ひどい頭痛が続きました。薬を飲んだり、整体に通ったり、いろんな方法を試しましたが、まったく良くなりませんでした。入会する直前は、真剣に自殺を考えていました。

C:私は、病気じゃないんですけど。おなかの子どもが逆子だったんです。お医者様はだいじょうぶだって言ってくれたんですけど、主人の母が危ないって何度も言うので、私も心配になって……。

――一部の週刊誌の報道によれば、多額の寄進をした人がいたとか。

A:野田のような人間ですから、それはあったと思います。

B:私もそう思います。

C:許せない話です。

――みなさんは、寄進はしていないんですね。

A:ええ、私には会の正体がわかりましたから。とてもお金を出す気になりません。

B:私もしていません。でも、会に残っていたら、どうなっていたかわかりません。

C:野田みないたケダモノにお金をだまし取られなかったのは、不幸中の幸いでした。たくさんの人が騙されたという話は、私も読みました。とても気の毒です。

――実際の「治療」の様子はどうなんですか。

A:私の場合、野田に症状について簡単な質問をされて、治療室の中央にあるベッドでうつぶせになるよう命じられました。その通りにすると、すぐに患部のあたりで猛烈なエネルギーを感じたんです。何年も続いていた痛みが徐々に消えていくのがわかりました。

B:私は治療室の椅子に座り、目を閉じるように言われました。すぐに、あたたかいというか、充実しているというか、言葉にするのは難しいのですが、とにかく痛みが少しずつ和らいでいくのがわかりました。

C:私も目をつぶっていたのですが、子宮のなかで赤ちゃんがゆっくりと回転するのを感じました。その前にも、赤ちゃんが中で蹴ったりするのはわかったのですが、あの時はもっとはっきりしていて、赤ちゃんの手や足、頭のかたちがわかるような気がしました。

――ということは、詐欺まがいの商法という、週刊誌の報道は当たっていませんね。

A:決して外れているとは限りません。たまたま私は腰痛がなおる時期だったのかもしれない。それを何らかの方法で知った野田が、私の家に配達された朝刊に会のチラシを入れたんだと思います。

B:本当は何の効果もない治療でも、患者の思いこみのために治ったような気がすることは、そう珍しくないそうですよ。

C:百歩譲って、仮にほんの少しの効果があったとしても、そのためならどんなことでもしていいというわけではないと思うんです。

――でも、みなさん、治療を受けたときには、たしかに効果を感じたんですよね。今では元に戻ってしまったんですか?

A:そのときは効果を感じたような感じがしたんです。いまも頭が痛くないような感じがするんです。でもきっと、いつか痛くなるんですよ。

B:一種の催眠術が、いまでも続いているんだと思います。ワラにでもすがりたい気持ちだったので、心のはたらきがどうかしてしまったのかもしれません。

C:ワイドショーに出ていたお医者さんも、こういう現象は科学的に説明できないわけではないって言ってました。怖くて行けないけど、ほかの病院に行けば、逆子のままだって言われるかもしれません。

――みなさんが脱会を決意した直接の理由はなんですか。

A:野田が大嘘つきということがわかったからです。「手かざし」なんてものを真剣に信じていた私が馬鹿に思えてきた。

B:人格を踏みにじるようなことを平気でする男だと、わかったからです。

C:お腹の子が生まれて大きくなって、「逆子だったぼくを、どうやって戻してくれたの」と聞かれたら、顔向けできないじゃないですか。

――では「手かざし」というのは、嘘だったんですね。

A:ええ、あんなのは大嘘です。

B:治療を受けているときには目をつぶっているので、わからなかったんです。他の会員が治療されている様子を見て、怒りがこみ上げてきました。

C:私も「信じられない」って感じで、泣き出してしまいました。すぐに野田に文句を言ったんですけど、開き直るばかりで……。

――何か、隠し持っている機械を使うんですね。

A:いや、そうじゃないんですよ。

B:機械を隠す場所はありません。

C:「こういう仕掛けがありました」って、もし白状してくれたら、そのほうがずっとありがたいです。

――野田氏は超能力者だと、みなさんは思いますか?

A:たしかに普通の人間とは、ちょっと違います。背後にある文字を読んだり、野田が何もないところに座ろうとすると、イスが近づいてきたり……。でも、私たちは、そんなことどうでもいいんです。

B:超能力者だって人間でしょ。だったら、超能力者である前に、ちゃんとした人間であってほしいんですよ。

C:あんな超能力なら、使わないほうが世間のためになります。

――正直申し上げて、みなさんが何に対して不満を抱いているのかわかりませんが……。

A:「手かざしエネルギー研究会」という看板を掲げた以上は、看板に忠実であって欲しいということです。違うのが1文字だけでも、ペテンはペテンです。

B:たとえ善意からでも、たとえ無料でも、たとえ超能力者でも、たとえどんな不治の病でも治せるとしても、患者に尻を向けてズボンとパンツを下ろすのはやめて欲しいと言いたいんです。

C:「尻かざし」が許される社会に生まれたのだとしたら、私はとても悲しいです。

――最後に、野田氏にみなさんから言いたいことはありませんか?

A:「なぜ神様が、私の尻に特別な力を与えてくださったのかわからない」と野田が言っているのを聞いたことがあります。わからないのならやめて欲しい。でないと、私たち患者が「なぜ私は尻に治されたのか」と悩むことになるんです。

B:私は自殺しません。その代わりに、尻に与えられた人生と、このあと何十年も向き合って生きていかなければなりません。できることなら、その重みをわかってほしい。

C:「手かざし」がダメなら、「足かざし」とか、「肩かざし」とか、他にいくらでも方法があると思います。できないというのは怠慢です。私たちが無理を言っているとは思えません。

――どうもありがとうございました。
@NIFTY FCOEMDYS嘘競演参加作品 お題「民間療法もしくは健康法」

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