考古学最前線 鳥はどこから来たのか?

 鳥は、いつ、どのようにして、空という巨大な空間に進出したのだろうか。多くの鳥類学者が、この問いに対する答えを求め続けている。

 分類的には、陸上を走り回っていた恐竜の一部がやがて翼を備え、青空に向けて飛び立ったとの説が、学界で主流になっている。最近、中国やマダガスカルで相次いで見つかった、鳥類と恐竜の両方の特徴を備えた化石が、それを証明している。

 依然として明らかにされていないのは、飛び立つまでの経緯だ。どんな理由で、鳥類の祖先は、ある日、空に向かってはばたいたのか。

 最近注目を集めているのは、シカゴ大学のジョン・ベルナール教授が発表した、「極度の鬱状態」説だ。そのころ鳥類の祖先は、気候の変化のためにえさが急減したことに悩んでいた。わずかなえさを仲間とともに奪い合いながら生きていくのは、あまりにも辛い。それならいっそ……。お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しください。そうつぶやいて崖から飛び降りた鳥類の祖先は、地面に激突する直前に死にきれなくなり、懸命に羽ばたいたところ、いつのまにか大空を飛翔していた。「ああ、飛んでいる。ボクは飛んでいるんだ」。そして少年はえさを求めてどこまでもどこまでも飛んでいきました……と、この仮説はややメルヘンチックだが、ベルナール教授によれば、白亜紀後期の崖っぷちの地層から見つかった、左右がきれいにそろった足跡が動かぬ証拠だ。

 これと並ぶ有力な学説は、ウェールズ大学のスミス・ウォルシュ教授が主張する「いつの時代にも、空は変わり者の舞台」との考え方。多くの人が空を飛ぶことなど神話の中のできごとに過ぎないと考えていた19世紀後半、ドイツの航空研究家リリエンタールは、狂人扱いされながらも、自作のグライダーで飛行実験を繰り返した。1896年には飛行中に突風にあおられ、墜落死したリリエンタールだが、その研究成果はライト兄弟をはじめとする世界各国の航空研究家に受け継がれた。

 ウォルシュ教授は、恐竜の世界にも、リリエンタールのような変わり者がいて、寝食を忘れて飛行実験を繰り返し、最後には墜落死したのではないかと推測する。「日本の琵琶湖で繰り広げられる鳥人間コンテストを見ても、空が変人を引きつけてやまないことは明らかだ」(ウォルシュ教授)

 一方、美しいメス恐竜の貞操の危機が、鳥類誕生の契機になったとの大胆な学説もここに来て注目を集めている。京都大学の吉永暁世教授らのグループが、当時、か弱くてどことなく浅丘ルリ子似の恐竜が生きていたとの仮定に基づいて行ったシミュレーション実験では、この恐竜が悪役肉食恐竜に囲まれ、絶体絶命のピンチに陥ったとき、どこからともなく赤いトラクターのエンジン音が聞こえてくる可能性が極めて高いという結果が出ている。安易といえばあまりに安易な展開ではあるが、吉永教授らはこの仮説が正しいことを証明するため、白亜紀のギター化石探しを続けている。

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