子どもの遊び最前線

 最近、東京都練馬区にある光が丘団地で、数か所の砂場がほぼ同時に消えた。

 これらの砂場はいずれも、ペットの犬や猫が用を足すための場所になっていた。区役所が砂場に土をかぶせて花壇に変更したのも、近くの住民から悪臭についての苦情が寄せられたためだ。

 日本の親たちは、砂場での遊びには教育的な効果がないと信じている。

 現在、小学校2年生の村木賢一君は、4年前、光が丘団地内の砂場から約3キロ先にある埼玉県和光市・西大和団地の砂場までトンネルを掘って、日本土木協会技術賞(幼児部門)最優秀賞を受賞した。ところが、弟で5歳の正二くんは、砂場で遊んだ経験が一度もない。

「ゼネコンの債務処理状況が不透明なままでは、砂場にも将来はない」

と、母親の理恵さんは言い切る。

 80年代中盤、砂場は子供たちの檜舞台だった。建設業界の未曾有の好況を背景に、砂場にも子供用ショベルドーザーやクレーンが持ち込まれた。ゼネコン系列の公共工事塾も次々とオープンした。年度末には、砂場の前に行列ができた。親たちは、砂場遊びが上手でさえあれば、それだけで将来は安泰だと信じた。

 ところが、バブル崩壊とともに、建設業界や砂場を囲む環境は一変した。光が丘団地の一角には、誰が捨てたのか、子供用土木機械が放置されている。所々に赤錆が浮いた「KOMATSU」や「KATO」の文字から、わずか数年前までの砂場の活況はまったく想像できない。 熊谷組では今年、これまで25年間にわたって続けられてきた「夏休み親と子のアーチダム作り教室」をとりやめた。環境保護への関心の高まりで、ダムはいまや悪者になってしまったし、仮に作ろうとしても、日本には男のロマン、巨大アーチダムを作れるような河川がもう残っていない。

 村木正二君のお気に入りの遊びは、糸電話。ただし、糸はない。

「これはね、ふつうのけいたいじゃなくて、じーえすえむのけいたいだよ」

 EUで開発され、東南アジア各国が導入したGSM方式を正二君が採用したことは、子供の遊びが内需型から、輸出型に転換したことをはっきりと示している。

 ブロック遊びは子供たちの間でなおも根強い人気を誇っているが、作られるのはパソコンや半導体といった小型高付加価値製品が主流になった。伊勢丹おもちゃ売場では、15センチ四方の地盤用ブロックが、1枚2円で安売りされている。お城や秘密基地などの不動産を作る子供がいなくなったため、地盤用ブロックが値崩れを起こしているのである。価格はピーク時の92年頃と比べ、100分の1以下。それでも買い手はほとんどいない。このほか、億万長者ゲーム、モノポリーなど、有価証券や不動産関連の遊びはどれも人気を失った。

 いま、子供たちの遊びは、一部の分野を除いて深刻なデフレの状況にある。今後、規制緩和や大幅な利下げをこども銀行に求める声が強まりそうだ。

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