秋のイチゴ

 日曜日、近所の果物屋で、季節はずれのイチゴをみつけた。毎年、12月から半年間にわたって出荷されるイチゴは温室栽培の代表選手だが、秋のイチゴはさすがに珍しい。

 冬のイチゴの甘味は、オルドビス紀から4億年以上の歳月をかけてゆっくりと作られたとも言える。ストーブの燃料として使われる石油は、農家のこまめな世話や適度な農薬・肥料と並び、冬のイチゴの栽培に欠かせない。

 イチゴが冬や春の果物だと信じている人も多いのではないか。本当は、初夏に収穫されるのが「普通の」イチゴである。それなのに消費者は、石油で育てる季節はずれのイチゴに高いお金を出し、普通のイチゴは安く買う。経済学的に言えばあたりまえの結果かもしれないが、考えてみると不条理だ。

 秋のイチゴは、本当は夏に収穫されるべきものを、クーラーで発育を遅らせて、秋に収穫したものなのだろうか。気になって、箱に電話番号が記されていた栃木県農協に問い合わせてみた。驚いたことに、来年の春に苗づくりが始まり、通常なら夏に収穫されるイチゴを、エアコンや照明で「だます」ことによって、10ヶ月も早く収穫してしまうのだという。

 現在はマイナス10ヶ月が最長だが、1年先のイチゴを収穫する技術はすでに確立されている。来年の初夏には、果物屋に再来年のイチゴが並ぶ予定だという。安物だった初夏のイチゴが、クリスマス前のイチゴ以上に高価になる。高価な果物は、農家はもちろん、豊かな日本の消費者にとっても魅力的だ。

 そういえば、秋のイチゴはとても甘かった。来年の夏は天気が良いのだろうか。

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