不祥事続発 揺らぐ「まじめ社員」の信頼

 企業や団体で事務局長や幹部社員による公金の横領事件が多発している影響で、「まじめな社員」の信頼性が大きく揺らいでいる。このままではまじめ社員の権限縮小につながるとして、真性のまじめ社員を擬似まじめ社員から区別する検定制度の整備を求める声が強まっている。

 昨年7月に発覚した、一般社団法人電信柱広告安全管理協会を舞台にした巨額の横領事件。21年間事務局長の座にあった男(懲戒解雇)は会員企業から集めた約1億6000万円を横領した容疑で逮捕され、一審で懲役8年の有罪判決が確定した。男が外国籍の女性に貢いだとされる金を回収するメドはまったく立っていない。

 現在、解散に向けた手続きを進めている協会の関係者は、元事務局長について「まじめそうな人で、歴代理事長の信頼も厚かった。横領がいまでも信じられない。それだけに悔しい」と語る。

 横領事件の多くで、こういった思いを関係者が口にする。「まじめ」「堅物」「尊敬できる人」「毎日まっすぐ帰宅していた」「ミスをしたことがない」「仕事一筋。何が楽しくて生きているのかと思った」。こうした評価を得ている人物だからこそ公金の管理を長年にわたり一任され、チェック機能は形骸化して機能せず、被害が拡大する。

 不正には縁のない大部分のまじめな会社員や団体職員には困惑が広がる。「横領事件が明るみに出て、『容疑者はまじめと見られていた管理職』などと報道されるたび、社長が疑いの目を私に向ける。まったくの風評被害だ」と語るのは、千葉県内で老舗の水産加工品メーカーに勤務する50代の財務担当者、Aさんだ。

 企業のコンプライアンスに詳しい青山大学大学院の橋田秀教授は、「一見まじめそうな社員の中に実は不まじめな社員が混入しており、彼らが予想もしなかった不正に手を染めることは経験的にわかっている。スーツの着こなし、髪型、言葉遣いなどから両者を判別するのは難しく、まじめな社員は高リスク群と最初から認識しておいたほうが、不正防止のためには有効ではないか」と指摘する。

 橋田教授は4月にも、会社でまじめな働きぶりが評価されているボランティア100人の協力を得て、外国籍の女性ホステスが勤務する錦糸町のスナックで甘い誘惑に対する彼らの耐性を調査する予定。集めたデータは今後の不正防止体制の整備に活かしたい考えだ。ボランティア100人については下心が応募の動機である可能性が大きいことから、勤務先に即時解雇を勧告する。

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