毎年恒例

 埼玉県浦和市の郊外に、床面積が10ヘクタールを超える世界最大級の倉庫がある。1年近く、ほとんど人気のなかったこの倉庫が、今日の夜から急に騒がしくなった。

 練馬、横浜、千葉、新潟、青森などのナンバーをつけたダンプカーがひっきりなしに倉庫に入り、山盛りの紙を降ろしては去っていく。倉庫の内部では数十台のショベルドーザーが走りまわり、紙の山を区分けしている。

 これらの膨大な紙は、大学入試センター試験の回答用紙だ。テストが終わった直後、約60万人の汗と涙の結晶は、ここ、大学入試センターの採点施設に運びこまれる。採点に当たるのは、センター職員と自衛隊員ら5300人。まず、ショベルドーザーで都道府県別の山を作る。次に、自衛隊員らがスコップやつるはしを操り、課目別の丘をつける。それから採点が行われる。ごくまれに、国語の解答用紙が数学の山に紛れるといった事故も起こるが、そんなときには解答用紙救助犬が出動して、国語の匂いがする紙を掘り起こしてくれる。

 地元・埼玉県の山では早くも採点が始まったようだ。褌姿になった自衛隊員とセンター職員、50人が三つの班に分かれて麻縄を引っ張ると、センター試験の採点のためだけに特注で作られた長さ20メートル、太さ2メートルの赤いサインペンが直立した。

「準備いいか。受験番号2454854、採点始めるぞ!」

 頭&ltかしら&gtの叫びで、空気が引き締まった。

「第一問 さーん!」

「第一問 さーん!」

「第二問 にぃ!」

「第二問 にぃ!」

 男たちは正解を復唱しながら、解答用紙の上でサインペンをわずかずつ動かしていく。

「第三問 よん!」

「第三問 にい!」

「いくぞ。そーれ。はい、そーれ!」

「そーれ。はい、そーれ!」

 1997年の大学入試センター試験、初めての「バッテン」はこのようにして赤々と記されたのだった。

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