自然のぬくもり

ツツタコ村は、ソマリアの首都、モガジシオから南西に向かってジープで約半日の距離にある。

今年のツツタコ村は、例年に増して暑い。例年なら平均気温は三五度程度だが、今年は三十九度に達している。四度の差は、言ってみればボランティアの心のぬくもりである。

いま、ソマリア南部では日本のボランティア団体「ぬくもりの会」が、こたつ普及運動を推進している。代表の川瀬美枝さんが「殺伐とした心が赤外線にほだされれば、部族紛争は逆に下火になるのではないか」と輝かせる瞳からも、赤外線はやはり出ていた。

最初の仕事は電力源の確保だった。ツツタコ村には太陽の光が春夏秋冬を問わずさんさんと降り注ぐ。「ぬくもりの会」ではまず、日本で集めた市民からの寄付、五千万円のほとんどを費やして太陽電池を村の中心部に据え付けた。赤外線ランプは大阪の家電メーカーから旧タイプの在庫部品を安価で譲り受けた。しかし、このほかの材料を購入する余裕はない。幸い、地元の密猟者グループが大量の素材を無償で提供してくれた。

象牙の骨組み、トラ皮の布団、海亀の甲羅の天板という自然の恵みを存分に活かしたこたつの中で、村人の一人が紅白歌合戦のビデオを見ながら日本産のみかんを食べていた。頬を濡らすのは涙なのか、汗なのか。村人はソマリア語でこう答えた。「ダセ アノ ロココ ハダ ミナ」。あえて日本語に訳すとすれば、「涙は心の汗だ」といったほどの意味か。

川瀬さんは、こたつに入ったことのない子供がいる限り、私たちの使命は終わらないと語る。ユニセフの調べによれば、世界の人口のうち四十九億人は、こたつという物がこの地球に存在することを知らない。

NIFTY-SERVE FCOMEDY 第1回嘘競演参加作品 お題:「こたつ」

カテゴリー: 国際 パーマリンク