検証・秘密保護法 どうなる? 知らない権利

 12月5日、国会近くの日比谷野外音楽堂に全国各地から1万5000人(主催者発表)が集まった。

「秘密保護法を許すな」
「戦前に逆戻りだ」
「国民の知る権利を守れ」

参加者が口々に叫ぶスローガンに眉をひそめる人物が、群衆からやや離れた場所に立っている。横山康弘さん(54歳)。「国民の知らない権利を守る全国協議会」の世話人代表だ。

「秘密保護法以上に心配なのは、反対派が国民の『知る権利』を声高に主張する余り、我々の『知らない権利』がないがしろにされるのではないかということだ」

もうすぐ暮れようとしている2013年を、横山さんは「これほど知らない権利が踏みにじられた年は記憶にない」と振り返る。

「クルマエビなのかバナメイエビなのか、ステーキなのか成形肉なのかなんて知りたくない人がほとんど。なぜマスコミは繰り返し報道し、国民の不安を煽るのか」

横山さんが注目するのは、知らない権利を侵害しながら情報が報じられても、知らされた側の幸福感は高まらず、情報を活用する能力もないという現実だ。

「核のゴミ、財政破たん、教育の崩壊……。どれも過去何十年と報道されてきたが、何ひとつ解決していない。それなら破滅の瞬間まで知らされないほうがマシ。最終日に飛行機が落ちることが決まっている団体旅行で、出発直後からガイドが『みんな最後はどうせ死ぬんだ』とぼやき続けるのと、墜落直前まで笑顔で旗を振っているのと、どっちがいい?」

横山さんの懸念をよそに、秘密保護法案が国会で審議される前から、知らない権利を軽視する風潮はますます広がっている。象徴的だったのが「竹田恒泰、華原朋美の熱愛報道」。皇室の歴史に詳しい伊藤浩二國學院大學教授も、「神武天皇御即位から弐千六百七拾参年間でこれほどまでどうでも良い話はなかったと認めざるを得ない」と、厳しい表情を浮かべる。

知らない権利にとくに敏感なのが若年層だ。都内の大学に通う橋場伸子さんは語る。

「マスコミには、少子高齢化や年金制度の崩壊で私たちが大きくなるころの日本は真っ暗だと繰り返し聞かされてきました。暗い面を強調するなら、多少は明るくなるように改革してほしい。それができないのなら、せめて黙っていてほしい」

知らない権利の意識は、海を越えて共感を広げている。ソウルに住む30代の男性会社員、イ・ミョンピさんは、日本のネットに掲載された嫌韓派の言論の翻訳を、韓国のニュースサイトで読んで激怒。日本人を侮蔑する発言を韓国語の掲示板に書き込んだ。これが翻訳されて日本で非難の的となり、バッシングの応酬はいまも続く。

「冷静に考えれば、これは日本人も韓国人も知らない権利に鈍感だから。日韓両国のネットでパラグアイについての悪口が見当たらないのは、パラグアイが知らない権利を尊重しているからではないか」

知る権利だけが強調され、社会がとげとげしくなるのを防ぐには秘密保護法という「毒」を使うしかないと、横山さんは指摘する。

「若い人には想像もできないだろうが、つい十数年前まで、それほどメジャーではない女性タレントの『お誕生会』をワイドショーが毎年報道するという知らない権利の侵害が公然と続けられていた。暗黒時代の再来を防ぐためには、秘密保護法を早期に改正して特定秘密の分野に『西田ひかる』を追加するしかない」

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