ミニバンの車体後方にも大型グリル

 トヨタ自動車は2020年以降に発売するミニバンについて、従来のフロントグリルに加え、リアグリルを標準装備すると発表した。後方に対しても存在感をアピールすることで、販売台数の増加につなげるのが狙いだ。

 自動車業界では近年、大きくて派手なフロントグリルがトレンドとなっているが、発表時には注目を集めた大型グリルも徐々に新鮮味を失い、モデルチェンジ時に一段と大きくなる傾向が続いている。狭い道で対向車とすれ違う際、フロントグリルが目立つ方が運転手の押しの強さを周囲に印象付け、早く通り抜けられることも、ユーザーの大型グリル志向を後押ししたとみられる。
 
 なかでも前から見た面積が大きいミニバンの市場では、メーカー間で激しいグリル大型化競争が繰り広げられてきたが、フロントガラスやライトを取り付ける部分にはグリルが取り付けられないため、これ以上の大型化は不可能と考えられていた。

 トヨタはミニバンのバックドアにもグリルを取り付けた車両を試作し、アンケート調査を実施した。その結果、7割の人から好意的な評価を得たことから、2020年以降のモデルにこのスタイルを導入することを決めた。前後2枚のグリルは標準装備とし、メーカーオプションでライトグリル、レフトグリル、トップグリルも装備可能とする。周囲の車が「触らぬ神に祟りなし」として十分な車間距離を取る副次的な効果も期待できそうだ。

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理想の姿を守る──桜守の人知れぬ闘い

 岐阜県飛騨地方のとある山。セミの鳴き声が騒々しい標高800メートルほどの斜面で、薄いピンクの花が満開の時期を迎えていた。周囲の木々はどれも深緑の葉を茂らせているため、その木だけ花の色が浮かび上がったように目立つ。ふもとの人里にある神社の境内が花見で賑わったのは2ヵ月前の話だ。

 額に浮かんだ汗を手ぬぐいでふきながら、飛騨で7代にわたり続く桜守、岡田亮吉さん(68)は驚きの声を上げた。

 「もう飛騨にはこの時期に開花するサクラは1本も残っていないと思っていた。人知れず今日まで残っていたのは奇跡に近い」

 岡田さんは満開のサクラの花を見上げて、合掌して何かを祈ってから、チェーンソーのエンジンをかけた。樹齢500年(推定)の古木が倒れるまで30分もかからなかった。

 すべてのつぼみが一斉に開花したかと思うと、数日のうちに一輪残らず散るサクラ。「もののあはれ」を尊ぶ日本人の人生観に共鳴することで、これほど親しまれる花になったと考えられがちだ。

「それはまったくの誤解。日本人好みの花に、サクラは作り変えられていった」と指摘するのは、京都県立森林研究センターの能勢孝之主任研究員(52)。「江戸時代中期まで、日本には300種類ものサクラが自生していた。花期や花の色はさまざま。その中から日本人の理想に合わないものが切り倒され、現在のサクラ像が形成された」。

 『高度経済成長と桜』などの著書がある経済史家、中森武史さん(51)は、日本が世界有数の経済体へと成長する上でサクラの選別が果たした役割は小さくないと指摘する。

「太田道灌が江戸城を築いたころ、武蔵国では年間200日以上はいずれかの種類のサクラが開花していた。仮に当時の植生が現代の東京に蘇れば、1年のうち半分以上が花見に費やされることになり、日本経済は完全にマヒするはずだ」

 現在、日本で代表的なサクラの品種とされるソメイヨシノは、上方におけるサクラの代表的な名所である吉野と、江戸を代表する花見の一大スポットだった染井でそれぞれ最も数の多かった品種を掛け合わせることで誕生したと思われがちだが、当時の植木職人が試行錯誤を繰り返して作り出した品種は、正確には「ソメイナニワエチゼンダザイフトウショウグウヨシノ」、いわば「全日本」のサクラだ。見方を変えれば、かつては染井、難波、越前、大宰府、東照宮、吉野にそれぞれ固有の品種があったことがわかる。

 しかし、すべてのサクラが人の手で飼い慣らされたわけではない。少数ではあるが、日本人のサクラ観にそぐわない木が山奥に自生している。このため日頃は庭園や公園でサクラの木の世話や植樹に従事している桜守は、年に1ヶ月程度、誰にも告げずに旅に出る。訪れる人などほとんどいない森に足を踏み入れ、時にロープを体に結び付けて崖を降り、丹念に理想の姿から外れたサクラを切り倒している。岡田さんもそんな桜守の一人だ。

 赤、青、緑の花を開かせるサクラ、カブトムシを粘液で捕食して栄養源とするサクラ、呼吸根を備えて河口域の湿地帯に順応したサクラ、そして幹から猛毒の気根を地面に向けて垂らし、木陰で宴に興じる人間を死に至らしめるサクラ…。日本人が理想とする姿からかけ離れたサクラと、桜守たちの人知れぬ戦いは、この瞬間もどこかで繰り広げられている。

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五輪歪める放映権料至上主義

 東京五輪・パラ五輪組織委員会が発表した男女マラソンコース。新国立競技場からスタートし、浅草、銀座、東京タワーなどの名所をめぐる42.195キロ。委員会の幹部は「東京の魅力を世界に発信できる最高のコースだ」と胸を張るが、日本陸連関係者の表情は冴えない。「先頭が21.0975キロのラインを踏み越えた瞬間、すべての選手にその場でしばらく立ち止まるよう命じるとの方針を世界陸連から聞いた」
 同じ瞬間、メイン会場の新国立競技場で花火が打ち上げられ、スモークの中からロックミュージシャンかポップスターが登場、バックダンサーとともに踊りながら、次々とヒット曲を披露する──。スーパーボウルのハーフタイムショーを、五輪のマラソン競技にも導入せよとの要求を、米国内での放映権を握るテレビ局のNBCがIOC(国際オリンピック委員会)に突きつけているのだ。
 高騰する一方の五輪開催費用。収入のうち最大の比率を占めるのが、テレビの放映権料だ。三大ネットワークの一角で、夏冬の五輪を米国内でほぼ独占放送してきたNBCは、2020年東京大会まで夏冬4回の五輪の放送権を44億ドルで、32年まで夏冬6回の放映権を76億5000万ドルで獲得した。IOCにとりNBCは大切な「お客様」。1964年には10月に開催された東京五輪が2020年には最も暑い8月に開かれるのも、秋には大リーグやNFLのポストシーズンゲームが目白押しで、五輪中継のヒマがないためだ。
 東京大会の運営に影響しそうなのはNBCの都合だけではない。米国内のテレビ視聴者の傾向もまた、オリンピックのあり方を変えようとしている。

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 「五輪中継に足りないもの、それは効果音だ」と直言するのは、数々のシチュエーション・コメディをヒットさせてきた名プロデューサーのジョン・ダーマリシュ氏。「米国の家庭で五輪中継を観た視聴者のかなりの部分が、どこで笑って良いのかわからずに戸惑っている」
 米国で制作・放送されるコメディの多くは、効果音として笑い声を多用している。各家庭のテレビの前に、家族以外にも大勢の人がいるかのような笑い声は、見方によっては不自然極まりないが、米国内の視聴者はテレビの草創期のころからこうした人工的な笑い声に親しみ、どこが笑うべきところなのかを教えられながら、安心して大笑いしてきた。「五輪中継も競技中の転倒、オウンゴール、珍プレーに笑い声をかぶせて視聴者を助けるべき」と、ダーマリシュ氏。
 東京五輪は17日間にわたり開催される予定だが、こうした笑い声で米国内での視聴者が増えた競技は、翌年以降にシーズン2、3、4と、いつまでも勝者が確定しないまま延長される可能性も出てきた。

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 ダラスで3日に開かれた全米柔道選手権大会の男子80㌔級。右手から登場したのは青い柔道着に身を包んだ選手、そして左手からは白い柔道着を血液や泥で汚した選手が登場した。この選手、歩き方や姿勢、顔色が他の選手とは明らかに異なっている。前日の3回戦で敗退したときには凛々しかった好青年が、一晩にしてすっかり変わってしまった。試合開始直後から青い柔道着の選手は大外刈り、背負投げ、巴投げなどの技を次々と決めるが、主審はなぜか一本をとらない。畳に叩きつけられた薄汚れた選手は、何度も立ち上がる。その表情は虚ろで、まるで生身の人間ではないかのようだ。やがて畳の上には数人の汚らしい選手が次々と登場。孤軍奮闘していた青い柔道着の選手も最後には力尽きた。
 これは、全米柔道連盟がこの大会から試験的に導入した「ゾンビ戦」。従来なら「敗者復活戦」と呼ばれていた。
 「アメリカ人はゾンビが大好き。三大ネットワークはどこもゾンビ番組で大盛況だ。柔道の敗者復活戦は、いわば死んだはずの選手が蘇る制度。呼び方を変え、多少の特殊メイクをほどこすだけで、視聴者の関心度は格段に高まる」(全米柔道連盟のリライナ・ペンジャルミン副会長)
 全米柔道連盟はIOCを通じて、東京五輪の柔道の会場を夜の雑司が谷霊園に変更できないか打診しているという。

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 アメリカの放送業界で、ある噂がささやかれている。「NETFLIXが、東京五輪からスポーツ中継に参入する」。NBCがIOCと結んでいるのは地上波放送の独占契約。巨額投資でオリジナル大作を次々と制作し、ネット配信してきたNETFLIXが参入すれば、五輪中継のスタイルを大きく変える可能性がある。
 東京五輪に出場するアスリートが決まるのは来年以降だが、NETFLIXの五輪企画については早くも主要な監督候補としてマーチン・スコセッシまたはローランド・エメリッヒの名前が取り沙汰されている。前者なら極限状況に置かれた人物の人間性を描き出す名作、後者なら最新のCG技術を惜しみなく活かしたアクション大作となりそう。いずれにせよ、五輪出場の条件には各国の代表選考会突破のほか、オーディション合格が加わりそうだ。

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アナログ停波から7年、突然のブラウン管人気

 都内で中古品販売店を経営する花村隆さんは首をかしげる。
 「アナログテレビが飛ぶように売れていく」
 地上アナログ放送の停波は2011年7月。使い道がほぼなくなったアナログテレビを、花村さんは発展途上国に売れるかもしれないと考えて安く買い集めたが、輸出先に見込んでいた国々で環境保護規制が厳格化して輸出が不可能になり、倉庫にはこの7年間、行き場のないアナログテレビが山積みになっていた。廃棄物として金を払って処理するしかないかと悩んでいたころ、事務所の電話が鳴り始めた。
「アナログのテレビ、できればブラウン管、14インチ以下で」
「ビデオ入力端子がないもの。1チャンネルか2チャンネルに外付けチューナーをつなげて使う」
「色ずれはどれくらいあるのか。いや、神経質なわけじゃない。むしろ色ずれが大きいほうがいい」

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 大量注文が始まったのは31日朝。2ヶ月前に慌ただしく発足した「西野ジャパン」が、初陣の日本代表対ガーナ代表でチャンスらしくチャンスを作ることがないまま0対2で敗れた翌日のことだ。家電アナリストの佐伯紀夫氏は、家電市場で始まったまったく逆の現象に注目する。
「どの家電量販店でも、通販サイトでも、西野ジャパン惨敗の翌日から、50インチ以上の画面を備えた大型4Kテレビへの注文がぱったりと途絶えた。『2週間後に迫ったサッカーのロシアW杯で、日本代表の躍動を大型、高精細の画面で見たい』という意欲を、消費者は失ってしまったのではないか」

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 匿名を条件に、熱狂的な日本代表サポーターの広岡さん(仮名)に、時代遅れのアナログテレビを入手した理由を聞くことができた。
 「ハリルホジッチの解任は到底理解できない。ガーナ戦での惨敗を見て、ロシアW杯での1次リーグ突破は無理だと確信した。日本代表が旋風を巻き起こすと信じて50インチ4Kテレビを購入したが、ポーランド、セネガル、コロンビアにいいようにやられる日本代表を巨大画面で見せつけられるのは耐えられない。かといって、長年日本代表を応援してきた者として、W杯で日本代表の試合を見ないわけにはいかない…」。広岡さん、そして無数のサポーターたちがぎりぎりのところで見つけた妥協点が、不鮮明なテレビを通じた試合の観戦だった。

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 静岡市内にある町工場跡から、絹田多壽子さんが最後まで残っていた一箱を運び出し、集荷に来た宅配便のドライバーに手渡した。優しかった夫との思い出に包まれ、静かだが幸せな日々を送っていた絹田さんの家の電話も、31日朝から鳴りっぱなし。15年前に他界した夫が経営していた町工場が、テレビの画面の前に取り付ける平面レンズフィルターを製造していたことが、傷心の日本代表サポーターによりSNSで紹介されたためだ。
 「確かに夫はそういう物を作っておりましたが、なにせ昔のことですから、もう残っていないはずです」と絹田さんは説明したが、多数のサポーターからの熱心な問い合わせに突き動かされて、夫の死後はほとんど足を踏み入れることのなかった倉庫の片隅で、売れ残った数十枚が箱に収められてホコリをかぶっているのを見つけた。
 「でもね、うちの主人が作ったのは、画面を大きく見せるための商品なんです」と、絹田さんは戸惑うが、裏返しにすれば画面は小さくなるとの情報もまた、SNSを通じてサポーターの間で共有されている。

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源氏物語「雲隠」発見の期待高まる

 日本古典文学会(会長:菱川勝京都大学名誉教授)は5日、源氏物語のうち本文が現代に伝わっていない「雲隠」について、コンピュータ・システムに何らかの情報が残っていないか調査するよう求める要望書を文部科学省に提出した。

 源氏物語は54帖から構成されているが、このうち第41帖の「雲隠」は表題こそ現代に伝わっているものの、その本文は早くに失われた。古来、貴族や国文学者が捜索を続けてきたが、有力な手がかりは見つかっていない。

 公文書の保管をめぐる一連の不祥事を受けて、日本古典文学会では発見の可能性がかつてないほどに高まっていると判断。文科省への要望書を決めた。「日本が世界に誇る源氏物語の唯一の欠落が『雲隠』。内容が素晴らしいものであることは疑いなく、いまから発見を楽しみにしてる」と、菱川会長は語る。

 要望書を受け取った林芳正文科相は「省内で該当文書があるかどうか調べたが、見つからなかった」と説明。有識者の間では、文科省職員個人が管理しているフォルダで「雲隠」で発見されるとの期待が俄然高まっている。情報公開請求を行うべきとの声もあるが、黒塗りで開示されれば内容が永久に失われることから、学会では今後、慎重に検討を行う方針だ。

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異体字の別人にデスノートの被害

 遺影を見つめながら、未亡人となった高橋圭子さんがぽつりとつぶやいた。「普段と変わらない様子で、散歩に出かけたんです。まさかこんなことになるとは…」

 近所の公園を横切り、河川敷、駅前を通って自宅に戻る。夫の弘明さんが過去10年間、毎日のように歩いたルートだった。駅付近のマンション工事現場に差し掛かった時、突然強風が吹いた。鉄骨を吊り下げていたクレーンのワイヤーが切れ、鉄骨の下敷きとなった弘明さんは即死した。

 その日は朝からほぼ無風状態。強風の理由は不明だったが、警察が業務上過失致死の疑いで建設会社社員を書類送検する直前、現場付近に住む高校生のAが父親に付き添われて警察に出頭した。

 「いじめっ子の高橋弘明を狙ったんです。まさか戸籍上の名前が『髙』橋だったなんて…」

 日本大学の青木修吾教授(漢字学)は、「私たちは日常生活の中で『高』と『髙』などの異体字を深く考えずに混用しているが、デスノートの上ではまったくの別の字。殺したい相手の名前を書く際には細心の注意を払うべき」と警鐘を鳴らす。

 警察庁の調べでは、デスノートをめぐっては他にも「山崎」さんが「山﨑」さんの身代わりとなって死亡したり、「渡辺」さんが狙われたのに、同じ町内に住む「渡邉」さんと「渡邊」さんがそろって非業の死を遂げるなどの事件が相次いでいる。

 「髙を高に統合する、邊、邉を辺に一本化するなど、異体字の削減を長年怠ってきた国立国語研究所の責任は重い」と、青木教授は行政の不作為を批判する。

 一方で、デスノートが異体字を正確に識別することが徐々に知られてきたことも事実。都内に住む飲食店員のヨシ田貴教さんは、電話で「ヨシ田さんのヨシは口の上が士ですか、土ですか?」と問われた瞬間から、不安で眠れぬ夜を過ごしている。

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幸せな老後はインドネシア語から──被外国人介護研修始まる

──Perut kosong. (お腹が空きました)

──Saya ingin pergi ke toilet. (トイレに行きたい)

──Aku makan makan malam lain? (私、もう夕食を食べたっけ?)

 流暢なインドネシア語で3人の日本人が発した言葉の意味は、介護職員に通じたようだ。ここはジャカルタ市郊外の老人福祉施設。現地の介護員が優しい微笑みを浮かべながら世話している。世話される3人はまだ50代から60代で、それぞれ機械メーカー勤務、飲食店経営、公務員の仕事についており、実際に介護される立場になるのは10年以上先の話だが、いつかは研修で磨いた能力が生きる。

 3人は、厚生労働省が募集した被外国人介護研修のパイロット事業に応募し、350倍の狭き門をくぐって選ばれた「精鋭」たち。完璧なインドネシア語で介護員とコミュニケーションを図り、トイレや入浴を含む介護サービスを受けている。

 「彼ら3人が適切な外国人の介護職と良好な関係を築けるかどうかが、2025年以降の日本の命運を握っている」と、同行した厚労省の審議官は語る。

 2025年には団塊の世代が75歳以上の「後期高齢者」となる。その数2200万人。人類が経験したことのない「超・超高齢社会」の最大の不安要素が介護職不足だ。全国で100万人もの欠員が生じるとの試算結果もある。

 従来、このギャップを埋めると期待されていたのが東南アジアなどの外国人労働力だった。日本語を話す介護職も少数ながらすでに日本国内で働いている。ところが、経済成長と社会の高齢化が並行して進む中国も、東南アジアからの介護職導入に向けた検討を続けており、派遣先の言語を話す優秀な人材をめぐる競争が生じるのは確実だ。

 そこで有識者が提唱しはじめたのが、「被外国人介護能力」、つまり外国人の介護職に世話される側の能力の向上だった。厚労省の検討会で座長を務めてきた葛飾保健福祉大学の稲葉雄介准教授は語る。

「老後、日本語の話者に世話をしてもらえる可能性は低い。日本語を話さない外国人介護職の本格導入を見越して、今から基本的なことがらは東南アジアの諸語で表現できるようにしておくべき」

 インドネシアの3人に続いて、この秋にはベトナム、冬にはフィリピンへの派遣も始まる。現在、都内の研修施設では食事、トイレ、テレビ、外出などについて、ベトナム語とタガログ語での表現ができるよう集中的な研修が泊まり込みで行われている。

 訓練科目は言葉だけではない。「昨夜はバンクオン(蒸し春巻き)、今朝はフォー(米粉製の麺)、今夜はバインセオ(ベトナム風オムレツ)。そろそろ和食が恋しくなってきたが、いつかベトナムの方に介護してもらうためには、これくらいは我慢しなければ…」と語るのは50歳代の研修生だ。

 外国人介護職の本格導入は、日本の老人福祉施設の運営のあり方も一変させると、稲葉教授は予測する。「いまは入居者のレクリエーションとしてお花見、収穫祭、クリスマスなどにパーティーを開いている施設のうち、タイから介護職を導入するところでは、早ければ2023年頃には本場さながらの水掛け祭りが始まるのではないか」

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「共謀罪」に悪魔懸念、天使にも不安広がる

 国会で組織的犯罪処罰法改正案が可決されたことを受け、いわゆる「共謀罪」の概念が初めて日本の法制度に導入された。言論や表現の自由が制限される、相互に国民が監視し合う時代が到来するといった不安の声が高まるなか、より強い懸念を抱くのが悪魔だ。

 「犯罪行為は人間だけでは成立しない。人間の耳元で『盗んじゃえよ』『誰にも見てないよ』『バカを見るのは正直者だけだ』といった我々の囁きが前提条件となる。共謀罪は悪魔を狙い撃ちするものではないか」と、匿名を条件に悪魔の一人は語る。

 国会審議で法務大臣が「一般人は処罰の対象にならない」と繰り返したことも、一般的とは言い難い悪魔が不安を募らせる要因となっている。

 悪魔とは反対の耳から囁く役割を担う天使にとっても、法案成立は他人事ではない。悪魔と人間が犯罪について話し合うのを座視すれば、共謀に加わり同意したとみなされ、三者揃って訴追される可能性があるためだ。

 「今後は縁結びではなく、犯罪の共謀を抑止する武器として弓矢を使用する必要もあるのではないか」。天使界の一部ではそんな声も出始めた。

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「忖度」が小中学校の正式科目に

 文部科学大臣の私的諮問機関である「日本らしい教育を考える懇談会」は、「忖度(そんたく)」を正式科目として小中学校で教えるべきとの答申をまとめ、23日に文科相に提出した。早ければ平成32年にも教育現場への導入が始まりそうだ。

 答申は「近年空気が読めない人が増えてきたのは、親や上司、権力者などが指示を下す前にその意向を読み取って早めに行動する日本人の美徳『忖度』が損なわれつつあるのが原因」と指摘している。

 答申を受け取った松野博一文科相は「全面的に同意する。早急に忖度の授業で教える内容の検討に着手したい、と思ったらすでに文科省の役人が詳しい計画をまとめていた」と語り、文科省にいまも忖度の習慣が深く根付いていることを明らかにした。

 文科省の中堅幹部は匿名を条件に、ゆるキャラの「ソンタクん」を海外のイベントに参加させて、忖度のすばらしさを国際社会に向けて強くアピールしたいとの考えを示すが、この構想がどの有力者のどんなアイディアを忖度したものなのかが判明するまでには、しばらく時間がかかりそうだ。

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「理想のジョージ」、トランプ騒動でまさかのあの人

 明治安田生命が行った「理想のジョージ」アンケートで、米国のジョージ・W・ブッシュ元大統領が1位に選ばれた。ブッシュ氏は大統領の任期中にも1位になったことがなく、突然のランクインが話題となっている。

 過去のこのランキングでは、小説「塀の中の懲りない面々」で人気作家になった当時の安部譲二氏、「みちのく一人旅」をヒットさせた山本譲二氏、独特の芸で吉本新喜劇の人気者になった島木譲二氏らが上位を占めてきた。一昨年、昨年は離婚問題で同情票を集めた高橋ジョージ氏が連覇を成し遂げている。

 外国勢では2005年に公開された映画「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」を監督したジョージ・ルーカス氏が同年の1位に選ばれたものの、その後は国内勢が優勢で、今年はテレビなどで活躍を続ける所ジョージ氏が有力だとみられていた。

 今回のアンケート結果について明治安田生命では「トランプ政権への不安が同じ共和党でも比較的理性的だったブッシュ政権への懐古へとつながり、評価を押し上げたのではないか」と分析している。

 なお、アンケートの2位は若年層から圧倒的な支持を集めた「おさるのジョージ」だった。

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